第380話 狼の嫁探し (押絵あり)
温泉へ入ったところ思わぬモノに出会ってしまった
翌朝俺たちはレオナとその仲間たちに見送られアマゾネスの村を出発することにした。みんなはもう少し休んでいたいと言っていたが俺が嫌なのだ。あそこにいたらどんな目に合うかわかったものじゃない。生きたままバラバラにされるかもしれない。
そんな俺たちにアマゾネスたちは名残惜しそうにしている。特にあの狼女はシャリンのことがとても気に入ったようで残らないか?と何度も誘っている。彼女たちのリーダーであるレオナが俺のもとにやってきた。
「本当にもう行くのか?私たちの仲間が先に偵察にいってもいいが。それか途中まで見送りをしても」
「お気持ちはありがたいですがそこまでお世話になるわけには行きませんよ」
レオナはわかったというようにただうなずいた。
「そうか、ならば崖沿いに行け。密林には人面犬どもがうようよとしている。昨日も姿を見たとの報告があった。気をつけていけよ」
俺たちは泊めてくれた礼をして村を離れた。そして言われたとおり崖沿いを目指して進む。
「そういえばシャリン、腕の怪我は大丈夫なのか?」
「ん、ああ、手当てはしてもらったからな。 まだ少し痛むがもうあの村にはいたくなくて……」
微妙な反応にみんな首をかしげている。
「なんというか、あの、狼女は、その……私を気に入ったみたいで、こ、恋人にしたいみたいだった」
「「ええー!」」
全員の驚く声が密林に響き渡る。まさか、いやありえる。女しかいないのだ、そのようなことがあってもおかしくない。シャリンが困った顔をするのもわかる。きっとあの狼女は戦いを交えて好きになってしまったのだろう。そんな彼女をカルベネがひじで小突いた。
「へえー付き合ってくればよかったじゃないの。人の気持ちを無碍にするなんてひどいなぁ」
それにシャリンはまた困ったような顔をする。まじめな彼女はそう言われて本気で悩んでしまうのだ。そんな様子を見てニーナが口を挟んだ。
「ちょっとなにいってんのよ、あんただって変なサテュロスの男がいたじゃない。かわいそうにねえ、あいつあんたのこと好きだったみたいだけど」
ふざけていたカルベネは大人しく引っ込んでいった。それから俺たちは無事、崖沿いの道へ出ることができた。確かに少し開けている場所で、崖は右手だ。そうなると敵が隠れられる場所は左手に見える茂みの中、襲ってくるの方向がわかる。
茂みに警戒しながら一列になって道を進む。もう面倒ごとはごめんだ。その人面犬になど会いたくない。だが俺の胸騒ぎはまるでそう予定されていたように的中する。
左手の茂みから三匹、いや三人と言うべきか人の頭を持った犬が現れた。突然出会ったのなら驚いただろうが事前に知っていたのでそこまで怖くはない。体格はエレナーゼと同じぐらいで大型犬の胴体に人間の頭をくっつけた感じだ。スフィンクスとは違い翼は生えていないなが、あごが小さい彼らに比べがっしりとしている印象だ。
先頭の男が待っていましたと言わんばかりに笑みを浮かべ近寄ってきた。
人面犬