第379話 地獄の釜 ♥
アマゾネスたちと和解し、食事を共にした一行(このエピソードには少々性的な内容が含まれます、苦手な方は読まなくてもストーリの進行に大きな影響はありません)
その晩、俺たちはレオナの所持している空き家の一つを貸してもらうことにした。ひさびさの宿にみんな嬉しそうだ。一息ついたところでリナックと呼ばれていた猿女がひょいと窓から入ってきた。
「おい、風呂に入るか?着替えを持ってついて来い」
まさか風呂にまで入れるなんてありがたい限りだ。俺はみんなを先に行かせ後で一人でゆっくり入ることにした。ベッドに寝転び重たいまぶたを閉じる。ああ、寝たいときに寝られるなんて幸せだ。
だれかに頬を叩かれている。いまだ重たいまぶたを持ち上げると目の前にリナックの姿が現れた。
「起きろ!お前は風呂に入んないのか」
「俺は……みんなが終わってからでいいよ」
まだ寝ていたいんだと言うように俺は体を横に向けた。リナックは俺の体をぴよんと飛び越えると再び目の前に回ってきた。
「お前の仲間はもうとっくに入ったよ。早く起きろ!私だって暇じゃないんだ、ほら、ったく世話の焼ける男だ」
俺は彼女にひきずられるようにして外へ連れ去られた。行き着いた先は野外にある自然の温泉だ。岩で囲ってありきれいに作られている。こんな場所があったなんて、これは人面犬も襲ってくるはずだ。
「ほら脱いだ脱いだ、はいれっ!」
リナックに服を剥ぎ取られると感動する間も無く湯の中へと突き落とされた。いきなり入ったせいでものすごく熱く感じる。俺は飛び上がり縁を目指す。
「おいおい、せっかく静かに入っていたのに猿なんでこんなもの連れてきたんだよ」
聞き覚えのある声に振り返るとそこには狼女とレオナがいた。慌てて目線を前に戻す。
「だーって私臭いの嫌いだもーん。ほんじゃごゆっくりー」
そんな……後ろを振り返りたくない。色々な意味で。
「心配するな、取って食ったりはしない。ゆっくりしなさい」
「けっこんな芋虫野郎、だれがいるか」
そうではなくて、なんというか混浴は気まずいというか。だがこのままでは失礼なので俺は岩に寄りかかり肩までつかった。なるべく早く出て行こう。横ではレオナが頭を後ろに倒し、目を閉じている。その隣で狼女も目を閉じ、じっとしている。こうして大人しくしているとかわいらしく見える。ふさふさの毛が濡れ、ぺたっとなっているところなど結構愛らしい。
「ヨーッス、おっ芋虫野郎じゃねえか、ゲハハハ」
もう一人だれか入ってきた。嫌な予感がする。ざぶざぶと水しぶきを上げお湯に入ってきたのはハイエナの獣人だ。背はそこまで高くはないががっしりとしており、耳まで裂けた口からは太い牙がのぞいている。そして足の間にも太いナニかが……えっ?!俺は思わず二度見してしまった。女だと思っていたがまさか男がいたのか?いやでも胸があるし。
なにが起こっているのかわからない俺の顔を彼女は楽しそうに眺めている。
「ケヘヘ、どうしたぁ芋虫。なにか面白いもんでも見つけたか。ここの村に留まりたいならいつでも言ってくれ、女にしてやるからよぉ、ヘケケケ」
ハイエナの女はニマリと恐ろしい笑みを浮かべる。そういえばハイエナの雌には擬似的な男性器があると聞いたことがあるが、まさか獣人でもそうなのか?
「やめなさい、客に失礼だぞ」
彼女はレオナにたしなめられフンフンと鼻を鳴らしながら湯へ体をつけた。俺は恐ろしくなり五分とたたないうちにその場を後にした。