第378話 昨日の敵は今日の友
レオナの介入で戦いは終わり、全員開放された
食事の席で狼女はシャリンのことがえらく気に入ったらしく積極的に話しかけている。先ほど牙を剥き敵対していた仲とは思えないほどだ。とりあえず休む場所と食事が手に入ったのでよかった。ほっと胸をなでおろしたところで数名の若い獣人たちが俺のもとに集まってきた。
皆、物珍しそうにながめ匂いをかぎだした。私にも触らせて、というように頭や腕を触られる。まるで動物に触れているみたいで複雑な気持ちだが、悪い気分ではない。今までこんなにモテたことがあっただろうか。そのうち女の子たちは積極的になってきて、服をまくったり頬をなめたりするようになってきた。
「ちょっ、ちょっとそんなところ、ハハハくすぐったいよ。なんだよ、なんだよ」
俺は背中を押され立ち上がった。すると彼女たちは何のためらいも無くズボンに手をかけた。
「ああっ待て、それはだめだって」
「いいじゃん減るもんじゃないんだし。見せてよ」
そんなノート見せてよぐらいのノリで言われても困ってしまう。俺にだって恥じらいはある。こんなに大勢の前で下半身を露出するなんて絶対に嫌だ。今度は俺の腕をつかみどこかへ連れ去ろうとする。まさか、ついに俺は脱童貞をするのか……。いやこんな場所でなんてごめんだ。今の俺に責任なんてとれない。それに仲間になんと言う?欲望に流される弱い人間だとは思われたくない。
「悪いが俺はこういうのはちょっと……」
「こっちこっち、ほら早く!」
当然俺の意見など聞いてはくれない。それはそうだ、この村では男に人権などないのだ。そこへレオナが姿を現す。それを機にクモの子を散らすように女の子たちは逃げていった。
「すまないな、こいつらは好奇心が強いんだ。男を間近で見たことが無くてね」
「ありがとうございます。そういえばなぜ女の人しかいないのですか?差し支えなければ……」
レオナは息を吐き、俺の横に腰掛ける。
「そうだな、私たちの先祖はもともと奴隷だった。よくあるだろ、地位の低い獣人たちさ。だが獣人というだけで昼は男と同じ労働を強いられ、夜は女として働かされる。そんな扱いについに女たちが立ち上がった。彼女たちは一揆を起こし、その大半は森へと姿を隠した」
それが今の彼女たちということか。それならば女しかいないというのもわかる。
「人間たちは私たちをアマゾネスと呼んで恐れた。今は落ち着いているが昔はもっと粗暴な集団だったと聞く。ところでお前たちは何をしていたんだ。どこへ向かっている」
俺は密林を抜けるために旅をしていることを伝えた。それに狼女が言っていた犬か猫がどういう意味なのか聞いてみた。
「そうか、今は行くのをやめたほうがいい。というのも人の顔をした奇妙な犬の大群が勢力を伸ばしてきている。ここ数ヶ月の話だ。だから私の仲間があの人面猫を警戒したのだろう」
この話を聞いて普通なら何をいっているんだ、となるだろうが今の俺にはうなずけてしまう。要するに人面犬の群れが暴れ周り、アマゾネスたちの縄張りを侵略しようとしているということだろう。そしてエレナーゼをやつらの一員だと勘違いしたと。……やはりよくわからない。そもそも人面犬とは?スフィンクスの仲間だろうか?だがこんなにも強い彼女たちが警戒するのならば、手強い相手であることは間違いなさそうだ。