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第375話 牙を剥く女たち、密林のアマゾネス 3

仲間を侮辱する狼女へシャリンが食ってかかった

 狼女はつっかかってきたシャリンへ鋭い視線を向ける。対してシャリンも負けじと睨み返す。人を馬鹿にしたような態度が気に入らなかったのだろうか。それとも何か別の作戦か。だが雲行きは依然として怪しい。


「な、なあシャリン、ここは大人しくしておいたほうが……」

「どうした私が怖いのか。でかい体して、まあ弱い犬ほど良く()えるというからな」


 俺の言葉を無視し、シャリンは挑発を続ける。もともと短気そうだった狼女は毛を逆立て怒りをあらわにする。


「そうかそんなに死にたいか。女だから奴隷として生かしておいてやろうと思ったがやめだ!お前から殺してやる出て来い!」


 隣の猿女が止めに入るも牢屋の扉を開け、シャリンへ腕を伸ばした。彼女の顔ほどもある大きな手が掴みかかる。助ける間もなくシャリンは外へ放り投げられてしまった。


「どうした立て!殺してくれと懇願(こんがん)するまで痛めつけてやる!」


 それに対しシャリンも望むところだと言わんばかりに立ち上がり短剣に手をかける。こんなのだれが見たって無謀すぎる。確かに彼女は今までの戦いの中で高い戦闘能力を発揮してきたが、相手は人間ではない。スピードもパワーも圧倒的に相手のほうが上だ。一撃を食らったのならたたでは済まない。


「おい止めてくれ、死んでしまう!」


 俺か鉄格子越しに叫ぶも猿女は肩をすくめただけだった。その間にも戦いは始まってしまっていた。狼女がシャリンを叩きのめそうと豪腕を振る。対してシャリンは間一髪のところでそれをかわし、後ろへと下がる。だが足が地面へ着く前にもう一撃が繰り出される。想像以上の速さだ。この様子に仲間たちはそわそわとし始めた。


「あのわたくしも出してください。お願いします」

「ちょっと聞いてんのこの毛むくじゃら女!」


 フィリアナとニーナが叫ぶも猿女は無視をする。こうしているうちにいつシャリンがあの鋭い爪の餌食になってしまうかわからない。


「んー?言っていた割には逃げているだけだな!」


 空き地の端へと追いやられたシャリンへついに魔の手が伸びる。服をつかまれるとそのままリングの中央へ投げ戻されてしまった。そこへ追い討ちをかけるように倒れている彼女へ掴みかかると持ち上げ、再び地面へとたたきつけそのまま投げ飛ばした。強烈な一撃に小柄なシャリンの体は浮き上がり人形のように転がる。悲惨な光景に仲間たちは目を伏せる。こんなの卑怯すぎる、だって力の差は歴然(れきぜん)だ。誰が見たってそう思う。


 これには耐え切れなくなったのかカルベネが檻から身を乗りだして叫んだ。


「おい!自分より小さいやつと戦って楽しいかよ?!」

「どうやら次の自殺志願者はお前のようだな」


 肩をいからせ歯を鳴らす狼女にカルベネは息を呑み一歩下がった。

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