第371話 落ちた橋
旅路へと戻ってすぐ、花に擬態したトカゲに出会った
思わず危険に足を踏み込みそうになったポリーンはしょんぼりとしている。彼女の不注意ではあるが本能には逆らえない、仕方の無いことなのだ。
「しょうがないよポリーン、そういえば尾の先に致死性の毒があるって本当?」
「えっへへ、あれはうそですよ。もちろん毒はありますが痛みが出て腫れるだけです」
あれはブラフだったのか。だがあの魔術師はまんまとだまされていたな。きえーと叫んでいた姿を思いだすとつい笑ってしまう。
「ははは、あのまぬけな魔術師今ごろどうしてるかな。他に援軍が来ないといいけど」
そのとき雨粒が一つぽつりと頬に当たった。それからあれよあれよという間に豪雨へと広がっていった。灰色の重たい雲が空を覆う。ザーザーとまるで上からシャワーをかけられているみたいだ。慌てて雨宿りできる場所を探す。
「こっち、あそこの岩場に隠れて!」
ニーナに促され、全員岩でできたくぼみの下に身を隠した。次第に雨は強まり雷まで鳴り出した。轟音と激しい光が密林に響き渡る。
「これはしばらく待つしかないな」
フィリアナはヴェロニカをおろし、髪を拭く。
「ええ、河が氾濫していないといいのですが」
響く雷鳴にピヨとポリーンは体を縮こめている。雨に行く手を阻まれ仕方が無いので夜が明けるまで岩陰で休むことにした。
翌朝、豪雨は過ぎ去り再び明るい日差しが木の葉の隙間から覗いた。だが雨のせいで湿気が増し気持ちの良い朝とはいかなかった。ただでさえ進みにくい道がびっしょりと濡れ、さらに進みが遅くなる。少し足を踏み入れただけでひざ下まで水びだしだ。
だがやっとのことでたどり着いた先で俺たちは愕然と肩を落とすこととなった。なんと進みたい先に架かっていた橋が昨晩の雷のせいで壊れてしまっていたのだ。
「あーあ、まったくちょっとローレンこれ直せないの?」
「で、できるわけないじゃない!ちょっと壊れているならまだしも、ぜ、全壊は無理よ」
ニーナに無茶振りされ怒るローレン。中央あたりで半分に壊れ、完全に切れてしまっている。みんなが困惑している中、シャリンがこちらを向いた。
「どうする、どこか渡れる場所を探してさらに迂回するか。それとも上流へのぼって近道するか。だがそっちだと獣人たちに出くわす可能性があるぞ」
そう言われても、わかってはいるが答えは出せない。迂回したときどれほどまで下っていけばよいかわからないし、その獣人たちがどれほど見張りを立てているかもわからない。ピヨに見てきてもらうのも良いがこの密林で彼女一人だけを行かせるのは危険すぎる。立ち往生していたところでニーナが口を開いた。
「しょうがないわね、上流へいきましょう。なるべくだれにも見つからないよう静かに移動すること。それとどこから襲ってきても対応できるように警戒を怠らないこと」
結局答えをだせないままニーナの意見に従うことにした。