第368話 コボルトの巣穴 1
戦いが終わった後、コボルトの巣穴へ招待してもらった
夜になってもヴェロニカは眠ったままだ。ポリーンはろくに食事もとらずにずっと傍で看病をしている。
「ポリーン、俺一回キャンプに戻ってみんなの様子を見てくるよ。もう疲れただろうからちゃんと寝るんだぞ」
「わかりましたお気をつけて」
俺は暗闇の中なんとか外へ出た。洞窟の中では夜なのにコボルトたちが忙しそうに働いている。彼らも復興のために一生懸命なのだ。みんなは入り口の近くで焚き火をたいて休んでいた。
「あーヒロがでてきた!ねぇー中どうなってるのピヨも行きたい!」
俺の姿を発見したピヨが一目散に駆け寄ってきた。それにつられニーナも近寄ってくる。
「まったくいつ出てくるのかって心配してたのよ。で、ヴェロニカは助かったの?」
「いやあそれが全然目を覚まさなくて。今はポリーンが見ててくれてる」
焚き火の傍に腰かけ、フィリアナからお茶を受け取った。
「でも驚きましたわ、あんなふうになるなんて。ただ夜行性なだけだと思っていました」
フィリアナの発言にみんなうなずく。俺もまさか日光で倒れてしまうなんて思ってもいなかった。これに対しセシリアが口を開いた。
「ダークハーピーは生まれつき闇のエネルギーを持ってる。それが日光に当たると焼けてしまうみたい。そのダメージは魔力が強いほど大きいの、諸刃の剣ってやつかしら」
それならヴェロニカは他のダークハーピーに比べなおさら深手を負っている。そんな状態であれだけ最後まで動けていたなんて相当な精神力だ。とりあえずポリーンを一人にしておくこともできないので洞窟へと戻ることにした。当然ピヨも行きたいと言い出したので仕方なく一緒に戻った。
ポリーンは小さな部屋でずっとタオルを代えている。そんな様子を見て楽しそうにしていたピヨも笑顔をしまった。隣へ行き心配そうに顔を覗き込む。
「ポリン大丈夫?ピヨが来たから代わろうか?」
「ううん、大丈夫ありがとう。私にはこれぐらいしかできないから。ピヨちゃんとヒロアキさんは休んでください」
そう言われてもポリーン一人に任せるなどできない。初めに少し休んで途中で看病を代わろう。俺は部屋のかどにもたれかかり目を閉じた。
う、なんだ……なにかが俺の顔を舐めている。近くで話し声も聞こえる。そういえばポリーンと代わるんだった。危うく忘れるところだった。うっすらと目を開けるとコボルトが二匹、俺の顔を覗き込んでいる。隣ではピヨが腹をだしながらグーグーと眠っている。
「え、あ、なに、何か用か?」
「アサ、オマエノナカマ、イナクナッタゾ」
朝……朝!洞窟の中だからわからなかった。結局一晩中、眠ってしまったのか。そういえばポリーンは?慌てて探すと彼女は昨日と同じ場所でタオルを握り締めたまま眠っていた。そして中央に横たわっていたはずのヴェロニカがいない。
俺は天井に頭をぶつけながらもなんとか洞窟の外へ脱出した。みんなはキャンプでそのまま休んだようだ。その姿を見つけただけでもほっとする。だがヴェロニカの姿はそこにはない、一体どこに行ったんだ。空はしらばみ朝日が顔を覗かせはじめている。
ふと鼻をかすめたタバコのにおい、振り返ると洞窟の近くで彼女は一服していた。
「あっヴェロニカ、よかった心配したんだよ」
「あーそうかい」
それだけ?まったく、こっちは目を覚まさないからとても心配していたというのに。今だ火傷のような傷跡が顔に残っているがそれでも一命は取り留めたようだ。