第366話 尾を巻いた者たち
セシリアとフィリアナの協力技により敵を退けることに成功した
ローレンにより縛り上げられた魔術師の男はもがきながら叫んでいる。
「くそーーお前らこんな小娘ども相手になぜ手こずっている!」
仲間の一人が倒れるのを見ていた他の三人は相手を止め上司を背に取り囲む。男の剣士と暗殺者、それから女の剣士だ。
「すいません、なかなか捉えられず」
女剣士が悔しそうに言った。彼女の相手をしていただろうカルベネが姿を現した。
「はははぁ、どうした姉さんそんなものか?私は今、素面だぞ。こんなのにも勝てんようじゃだめだね」
そう言うが腕から血を流している。きっと戦いの中で傷ついたのだろう。
「くそっこの獣め、私に向かって減らず口を叩くな!わざと命をとらずにいてやったんだ」
「ちぇー口だけは一人前なんだからなぁ」
セシリアがダークエルフたちへと向き直る。
「それでどうするの、このままじゃあなたたちの負けよ。死にたくないなら降参しなさい」
糸でぐるぐる巻きにされている魔術師はぐーっとうなり声をあげた。
「うぐぐ、くそっこ、この女どもを全員殺せ!遠慮はいらん、殺してしまえ!」
そこへ狼と戦っていたエレナーゼとピヨが戻ってきた。
「あなたの召喚した精霊は姿を消したけど、まだ同じことが言える?」
きっと呪文が切れたのだろう。本が無ければ魔法は使えない。それにアラクネの糸は剣で切るにせよ時間がかかるだろう。俺たちの勝ちだ、もうダークエルフたちに抵抗する手段はない。そこへ怒ったコボルトたちがなだれ込んできた。家を取られ、好き勝手された彼らの怒りを止めることはできないだろう。三人の戦士たちは顔を見合わせると上司を置いて逃げていった。
「あっお前たち、まてっ、まてこらー!!俺を置いていくつもりか?ふざけるな戻って来い、貴様らー」
断末魔とともにコボルトの大群に囲まれてしまった。セシリアにやられた大男も彼女を一目振り返るとそのまま密林へと姿を消した。決着がついたところで俺はとりあえずみんなの傷の手当をすることにした。
「カルベネ腕の傷は大丈夫か?かなり血がでてたけど」
「ええっ兄さん心配してくれるの?!そっそんならお酒がちょっと飲みたいんだけど」
「……セシリアに治療してもらえ。回復魔法で」
疲れているところ申し訳ないが今は彼女が頼りだ。戦いを終えて剣を鞘にしまったフィリアナが手首をさすっている。
「ふうー勝ったとはいえ結構大変な戦いでしたね、みなさん無事ですか?」
「ほんとよ、まったく懲りないやつら。あたしなんて犬に尾を噛まれたわ。そういえばヴェロニカは大丈夫なの?」
ニーナに言われて思い出した。ヴェロニカのことはポリーンが看病してくれていたみたいだ。水で濡らしたタオルで肌を冷やしているがぐったりとしていて目を開ける様子が無い。
そこへ後ろからコボルトが数匹やって来た。
「オイ、ダイジョウブカ、コッチニコイ、オデタチノイエアンナイスル」
俺たちは彼らの親切な提案に甘えることにした。