表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

364/1157

第359話 迫り来る刃

立ち塞がった敵は詠唱型の魔導師だった

 魔術師の男が詠唱を終えると(かたわ)らに青白い炎とともに二体の狼が現れた。それは本物の動物ではなく、炎でできた召喚獣のようだ。周囲を囲っているダークエルフの戦士たちも武器をかまえる。


「フフフ、あの双子の魔術師に勝利したみたいですが今回はそうはいきませんよ。さあ時間の無駄です、皆殺しにしてしまいなさい」


 男の合図とともに一斉にこちらへ向かって来た。フィリアナを先頭に敵を迎え撃つ。それと同時に召喚された二匹の狼も襲ってくる。エレナーゼが敵の合間をくぐり狼へと炎を放った。


「こいつらはいわば零体、物理攻撃には強いの。私が対処するわ」


 二匹の狼は彼女が脅威だと感じたのか瞬時に身を(ひるがえ)し取り囲む。一方向かってきている敵は四人ほどだ。人数はこちらが勝っているので陣形を崩さず冷静に対処すれば勝機はある。ダガーを構えた一人が俺の元へ向かってきた。さすが暗殺者なだけあってものすごいスピードだ。あっという間に距離を縮められてしまった。人の殺し方に迷いが無い。


 だがこれはむしろ好都合だ。一撃を避けられれば反撃の余地がある。俺は少し離れた位置にいるシャリンへ目配せをした。その一瞬の隙を敵は見逃さなかった。次に視線を戻した瞬間、目の前の刃に映る自分と目が合った気がした。考えるよりも先に体が動く。本能的に俺はあごを引き体をのけぞらせた。


 寸でのところで一撃を回避する。だがその動きを読んでいたかのように反対側の手が伸び、襟首をつかまれた。まずい今の攻撃はただの脅しだ。俺を殺そうと逆手で構えた刃がのどへ向けられる。


 そのとき暗殺者の顔が一瞬苦痛に歪んだ。きっとシャリンが後ろから攻撃したのだろう。俺はその隙にダガーを持っている手を押さえる。それでも殺そうとしているのかものすごい力で押し返してきた。両手で押さえているにもかかわらずどんどんと刃はのどもとへ近づいてくる。まるで死へのカウントダウンのようだ。しかし俺に固執しすぎたせいかシャリンの短剣が敵の肩へと突き刺さった。彼女は自分より背の高い相手に対し、飛び上がって肩に手を回し体重をかけた一撃を食らわせたのだ。


 これにはさすがのプロも手を離し距離をとる。短剣の引き抜かれた傷口からは赤い鮮血が流れ出している。ふと辺りを見渡すと皆、それぞれ敵を相手にしている。フィリアナは大きな斧を担いだ重戦士と戦っている。俺の体重より重そうな斧を横へ振り地面へ叩きつけ、そのまま振り上げる。ものすごい迫力だ。さすがの彼女もこれには近づけずにいる。


「アリスガワこいつは私が相手をする、お前は魔術師を叩きに行け」


 短剣を血に染めたシャリンの声にうなずき敵の横をすり抜けた。行かせまいと暗殺者は反射的に俺の背を狙う。だが鉄のつめは俺の背中を捉えることは無く、シャリンによって逆に背後からの攻撃を食らうこととなってしまった。幸いにも各自が良い位置で相手をしてくれているため魔術師への道は開かれている。苦戦を強いられると思っていたが、今回は大した怪我を負わずに済みそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ