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第352話 誘う舌 2 ♥

道中、植物の罠にかかってしまった(エピソードには少々性的な内容が含まれます、苦手な方は読まなくてもストーリの進行に大きな影響はありません)


 触手に捕まってしまった二人をどう助けるか、剣も聞かず行けば捕まるだけだ。無抵抗なシャリンをいたぶるように耳をペチャペチャと触手で舐めている。


「やっヤメ、くっ、この……」


 そういえばカルベネはどこへ行ったのだろう。まさかすでに食われてしまったのだろうか。


「カルベネどこだ?いるかー?」

「ここ、ここよ兄さん」


 見上げると木の上に彼女の姿があった。きっと一人だけ避難したのだろう。


「おいなんで助けを呼びに来なかったんだ」

「いやだって降りたらこいついるし、それにセシリアさんのこんなお姿滅多に拝めない……おっと」


 それが目的か、なんてことをしてくれる。おかげで二人も巻添えを食らってしまった。


「どいて火であぶるわ」


 エレナーゼはそう言うと大きな花に向けて魔法を放った。爆音とともに一気に炎があがった。これにはたまらんと言わんばかりに触手は二人を手放し暴れまわる。俺はすぐに駆け寄りシャリンとセシリアを救出した。たちまち花は炎に包まれ姿を消してゆく。


「わーお猫女やるー、へへっこれで一件落着よ」


 能天気なカルベネがするりと木から下りてきた。まったくなんていうやつだ、信じられない。すると逃がさんと花が最後の力を振り絞り炎の中から触手を投げ打ってきた。俺は咄嗟(とっさ)に横に飛んだ。


 触手は俺を通り過ぎ、カルベネの足に巻きつくとそのまま彼女を引きずって行った。


「あ゛あ゛ーたすけてー火に、火に入るー!」


 助けるのが面倒なのでそのまま引き戻される彼女をじっと見つめていた。なんとなく大丈夫だろうと思う。


「ほがあーあっつ、あつい助けてーあだぁー」


 ボンという音とともに花が爆発した。勢いに押されカルベネの体が宙を舞う。まさに自業自得だ、少しは痛い目に会ったらいい。俺たちは茂みに突き刺さった彼女を置いて皆のところへ戻った。


「あっ戻ってきました、みなさん大丈夫ですか?」


 フィリアナが立ち上がってこちらへ向かってきた。二人はぐったりとしているが命に別状はなさそうだ。俺たちは濡れタオルで体をぬぐった。


「はあーまったく死にかけたわ、とんでもない化け物ね。ああやって生き物の自由を奪って生きたまま食べるつもりだった」


 セシリアはそう言って水を飲んだ。シャリンもそれにうなずく。


「うむ、密林はこれだけ植物が生い茂っている。動物だけではなく草木も必死に生存競争を繰り広げているんだな。あそこで死ねばそのまま肥やしにもなる、栄養を独り占めできるつてわけだ」


 なにがともあれ二人に怪我がなくてよかった。やはり密林にはなにが潜んでいるかわからない、恐ろしい場所だ。今夜はここにとどまり休むことにした。


「みんな、私を忘れてるぜーひどいやー」

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