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第351話 誘う舌 1 ♥

海から密林へと再び戻ることとなった一行(エピソードには少々性的な内容が含まれます、苦手な方は読まなくてもストーリの進行に大きな影響はありません)

 草木が生い茂る密林を荷物とともに進むのは体力をがっつりと削られる。海での戦いもあって俺は正直みんなについていけなくなっていた。列の最後尾でなんとか見失わないようにするので精一杯だ。そのときどこからかふわりと甘い香りが漂ってきた。一瞬体が浮いたような感覚になり、疲れを感じなくなる。この香りにみんなも気づいているみたいだ。


 カルベネがすんすんと辺りを嗅ぎ回る。


「むむっいい匂いがするぞーこっちだ!」

「あっおいカルベネ」


 今の俺に止める力などあるはずもなく、彼女は列を抜け茂みに入って行ってしまった。


「心配するな私が行こう」


 先頭にいたシャリンが後を追う。それにセシリアも続いた。


「ではわたくしたちはここで待っていましょう。まったく困りましたね」


 フィリアナはそう言うと地面に座り休憩を取り始めた。俺もそれに賛成だ。同じく隣へ腰掛けしばし休息をとる。だが彼女たちがいなくなってから十分、いや十五分ぐらいは経っただろう。一向に三人が戻ってくる気配がない。さすがに心配になったのかフィリアナが辺りを見渡す。


「あら帰って来ませんね、そういえば先ほどから感じるこの香り、だんだん強くなっていませんか?」


 それは俺も感じていた。そのせいで頭がふわふわして動きたくないのだ。ずっとここに座ってこの香りを堪能(たんのう)していたくなる。


「しょうがないなぁーよいしょ、俺が見てくるから荷物お願いね」

「待って私も行くわ」


 護衛にエレナーゼがついてきてくれた。三人が向かったほうに近づくにつれどんどん匂いは強くなる。足元がおぼつかなくなりうまく歩けない。


 草木を掻き分け進んだその先に大きな花が現れた。まるで真っ赤な花に吸い寄せられるように足が勝手に動く。意識に(もや)がかかったようになにも考えることができない。


 行かなくては、もっと前に……頭が、ぼーっとして気分がいい、あの花のところへ……。


「ヒロアキ、行ってはだめ!止まりなさいそれは罠よ!」


 遠くでエレナーゼの声が聞こえた瞬間、ぬるっとしたなにかに足を触られた。気持ちの悪い舌のようなものが足首に絡みつく。


「だめっどきなさい!」


 衝撃を感じるとともに俺の体は横へ吹き飛ばされた。痛みで夢から覚めたように意識がクリアになる。振り返るとそこには巨大な花の下から長い触手のようなものがいくつも伸びていた。エレナーゼはすばやく後ろへさがる。


 よく見ると花の下にシャリンとセシリアが倒れており、触手に絡まれている。


「くっア、アリスガワ、逃げろこれは……罠だ……不覚にも捕まってしまった」


 ぬめつく触手にまとわりつかれ二人は手も足も出ない状態だ。戦おうとしたのかシャリンの短剣が近くに落ちている。触手は容赦なく服の下へと手を伸ばし、無遠慮にまさぐる。まさかあのセシリアが動けないでいるなんて。


「ちょっ、なに見てんのよ、あっやめなさいそこはダメ、んんッ」


 心なしか顔が赤く、息も荒い。


「待ってろ今助けるから」

「む、無駄よこいつに剣は効かないの、はあぁ、うぐっ」


 一本が開いたセシリアの口へ突っ込んだ。容赦なくのど奥へとずるずると滑り込んでゆく。彼女は口から涎を垂らし、目をむいている。


「むぐっ、う、クグッ」


 まずいこのままでは窒息してしまう。だがその寸前で口から引き抜かれる。


「ガハッ、ハア、ハア……」


 彼女は酸欠のせいで意識がはっきりしないのか舌をだらんと出したまま荒い呼吸をするだけで動かなくなってしまった。

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