表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

355/1157

第350話 阻む緑

ウデュラスを撃退し、カプリコーンの青年を救出することができた

 翌日俺たちは水和に見送られ浜を後にした。彼の話によるとカプリコーンの青年は無事なようだ。空に海に散々な目に合っている。やはり陸が一番落ち着く。


 穏やかな砂浜を抜け再び密林へと戻った。本当は行きたくないが仕方がない、これが最短のルートなのだ。川沿いではないので来た時とは別の道になる。


「アリスガワお前は大丈夫か?一人で怪物を相手にしたと聞いたが」

「あはは、まあ結構危なかったな。助けが来たからよかったけど」

「ヒロさんが落ちたときわたくし心臓が止まるかと思いました」


 胸に手を当てフィリアナが笑う。一番心臓が止まりそうになっていたのは俺だ。


 海風が止み、すぐにじっとりとした暑さに全身が包まれる。馬鹿だと思うが海が恋しくなってきた。ボアオークかメリュジーヌに会えればラッキーだ。そんなことをぼんやりと考えながらひたすら足を動かす。


「そういえばヴェロニカとカルベネは怪我大丈夫なのか?」

「ええー兄さん私のこと心配してくれるの?それがだめなんだ傷口がずっと痛くて」

「酒はあげないぞ」


 その一言でカルベネは黙った。深手を負ったように見えたが元気そうならよかった。ただヴェロニカから返事がないのが心配だ。彼女はフィリアナの背に(またが)りうつむいたままだ。何も言わないヴェロニカに代わりセシリアが答える。


「しょうがないの、私の回復魔法はダークハーピーには使えないから。回復魔法は基本的に光属性の魔法、彼女にとっては逆効果よ。治せたのはゲロ女だけ」


 船の中でずっと治療してくれていたのか、どうりでカルベネが元気だと思った。ダークハーピーが(まと)っている闇のエネルギーと相反してしまうのだろう。


「今は動かないようにするのが一番。傷口が開くと困るから」


 セシリアの言うとおり今はこれしかない。引き続き旅に誘ったことが申し訳なくなってきた。フィリアナもなるべく動かさないよう慎重に歩いてくれている。


 会話も終わりただ黙々と密林を歩き続ける。湿気と暑さで目の前がだんだんとぼんやりしてくる。常に聞こえてくる動物の声と行く手を阻む緑、これはテレビの中だけの出来事だと思っていた。雄大な自然を相手に身一つでサバイバルする、そんな番組だ。まさか自分が体験する羽目になるとは。


 なんと言おうとこのさき数日、いや数週間はこの緑の迷路からは抜け出せないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ