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第348話 勇猛な角 2

カプリコーンの青年が陸の戦いへと参入してきた

 俺は迷わずその落ちた銛を手に取り、そのまま怪物のもとへと突進した。飛び込む勢いで体重を乗せ足に突き立てる。


「ウギィィィー」


 それにはたまらず海の暴君も悲鳴を上げる。口を離れた青年は砂浜へと落ちた。怒り狂ったウデュラスの歯の隙間からは氷の液が漏れ、シュウと音を立てる。


亜李須川(ありすがわ)さーん大丈夫ですか?」


 聞き覚えのある甲高い声に振り返ると水和(みわ)がこちらへ向かってきていた。どうして俺がいるとわかったのかはさて置き、こんな場所に彼がいては危険すぎる。


「水和こっちへ来ちゃだめだ、危険なんだ!」


 だが彼の後ろからは何人も男たちがついてきている。村の漁師たちだ。皆、口々になんだあの化け物は、と騒いでいる。それに驚いたのかウデュラスは慌てて走り出すと海へと逃げていった。そのままイクチオケンタウロスたちに目もくれず一目散にどこかへ行ってしまった。


「ハアハア、お怪我はありませんか?」

「ありがとうおかげで助かったよ。あ!そうだ悪いが水を持ってきてくれ怪我人がいるんだ」


 彼はわかりましたと漁村へ引き返していった。俺は砂浜でぐったりとしているカプリコーンの青年のもとへ駆け寄った。


「おい大丈夫か?しっかりしろ」

「あ、ああ、お前か人間。ゴホッ助けてもらってしまったな、かたじけないグッ」


 苦しそうにうめく青年の尾には痛々しい傷跡がつき、赤く染まっている。俺はマントを取り、その上に彼を寝かせた。


「大丈夫だこのぐらい大人しくしてればすぐに治る」


 そう言って無理にでも海へ戻っていこうとする。たが動くたびに傷跡からは新しい血が滴り落ちる。このままでは普通のサメにだって狙われてしまうだろう。漁師たちは去ってゆく怪物とケンタウロスたちの姿を見て慌てふためいている。


「だめだろまずは血を止めなきゃ、すいませんだれか包帯を持ってきてくれませんか。あとはきれいな布もお願いします」


 海のケンタウロスたちも人間の姿を警戒して寄ってこない。それどころか逃げた怪物を追いかけていってしまった。


「ヒーーーローーーあーいた!」


 背後からピヨの声が聞こえた。安堵(あんど)もつかの間、人間が大勢いるところにみんなを呼ぶのはまずい。漁師たちは今度は後ろからやってきた仲間に驚いている。もうこの際どうでもいい、全員が無事だったことそれと目の前の青年の手当てをしなくてはならない。俺は水和から桶を受け取ると傷口を真水で洗った。人間を押しのけ仲間が次々に駆け寄ってくる。


「まあ大変怪我をしているのね、すぐに手当てをしなくっちゃ」


 ポリーンは誰よりも早くかばんから布を取り出し傷口の手当を始めた。漁師たちの声など全く耳に入っていないみたいだ。


「よし、血は止めました。セシリアさん確か回復の魔法が使えましたよね?お願いします」


 ポリーンに頼まれセシリアは手当てに当たる。


「みなさんなにを見ているんですか?さあさあこれは見世物ではありませんよ。怪物は去りました、お家へ帰ってください」


 人一倍小柄な彼女が漁師の男たちをぐいぐいと追い返す。その様子にニーナもポカンとしている。


「そうだ海水を運んでこなきゃ鱗が乾いてしまいますね、ニーナさんお願いしますね」


 桶を手渡され彼女は何も言わずに水を汲みに行った。

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