第338話 終わらない冒険 2
ポリーンの一声で旅を続けることにした一行
色々問題は山積みだがとりあえず今はみんな無事に生還できたことに祝杯をあげようと、俺たちは近くの食事処へと足を運んだ。
『乾杯ーー!!』
ひさびさに目の前に並ぶごちそうにみんな自然と笑顔になる。カルベネは乾杯を終えると同時に中身を一気に飲み干した。
「うげーなんだよこれジュースじゃねえか、果実酒だと思ったのにー」
「あはは、お前のためだよ」
彼女に配慮してわざわざジュースにしたのだ。それにピヨとポリーンもいる。二人はこっちのほうが好きだろうし一石二鳥だ。浮かれる俺たちを尻目にユニコーンの男は腑に落ちない様子だ。聞きたいことがあるので彼にも来てもらったのだ。
「そういえば俺たちあの少年、えーっとなんだっけヒュプノスだっけ?に助けてもらったんだけどみんな聞いたことある?」
俺の言葉にみんな顔を見合わせている。やはり俺だけではなく知らない人のほうが多いのだ。それに助けてもらったって彼一人でどうやったのだろう?あの瞬間、俺は疲れて事切れてしまったのでその現場を見ていない。するとエレナーゼが口を開いた。
「ヒュプノス、名のある悪魔のうちの一人よ。眠りをつかさどる悪魔、自分も基本的にはずっと眠っているといわれてるけど本当にいたなんてね。どうりであの時、急に眠ってしまったわけだ」
なるほど、だからユニコーンの男は彼を見て慌てていたのか。エレナーゼの言うとおり、一人で大群を相手にできるほど強い悪魔なのだ。とてもそうは見えなかったが本気を出したらすごいのだろう。隣で男がため息をもらした。
「そうだとも、だからダークエルフたちは手を引いたのだ。本当は君たちなど助けなくても良いのだが、きっと騒ぎを起こしたくなかったのだろう。彼は騒がしいのを一番嫌う。そういえば青年、君の名前はなんだ」
「あっ俺は亜李須川 弘明です」
そういえば名前を聞いていなかった。俺が名乗った後、彼は自身をエグザムだと名乗った。
「エグザムさん、もう一つの世界へ行くにはどうしたらいいのですか?どうやってここまで来ましたか?」
みんなの視線が一気に彼に集中する。ピヨとカルベネはそんな中でもお構いなしに我先にと肉を食べている。
「うむ……やはり行くのか。地図を見せてみなさい。この地図は世界の半分だけだと話をしただろう?絶極大地の東側にもう一つの世界があると」
「はい、それじゃあこっちに進めばいいんですか?」
俺が右側を指差すとエグザムは首を横に振った。
「いいやこちら側は広い海だ。だからだれもたどり着けない。途中何があるかもわからないしな、私は反対側から来たんだ。再びクーバイアへと引き返し密林を抜けた先から回ってゆけ。だがな、密林を抜けていくのは容易ではないしそこからの航海も非常に危険だ」
もう一つの大陸へなにが潜んでいるかわからない密林を命をかけてまで抜けようとする人なんていないのだろう。
「私は運良くクーバイアの端へたどり着くことができた。だがそれでも満身創痍の状態だった。密林は避けて通りなさい。砂漠を遠回りして」
「そんなことしてたらダークエルフに追い抜かされちゃうじゃない!」
そこへ口を挟んできたのはニーナだった。確かに彼女の言うとおり、思ったより事を急いだほうが良いかもしれない。