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第329話 地と風の魔術師、デリアとラボナ 8

籠城したラボナに手も足も出ない一行

 持っていた残りの酒を一気に飲み干すとカルベネは残る敵に向かって走り出した。ピヨも後ろから飛びそれに続く。


「ハッ、自分から突っ込んでくるなんて馬鹿ね。いいわ好きなだけ食らいなさい」


 カルベネは脚のばねを使い地面を飛ぶように接近する。ピヨの爆発を使いあの岩壁を吹き飛ばすつもりだろう。ラボナは真正面から迫ってくる彼女に容赦なく石を飛ばす。


「カルベネ避けろ!危ないぞ!」


 だがカルベネは俺の言葉を無視し、なんと頭でその飛んできた岩を受け止めた。ガツンという鈍い音が夜の森に響く。一瞬たじろいだが体勢を戻すと再び走り出した。俺の隣では少し体力を回復したニーナが唖然としている。


「あの馬鹿なにやってるの?あんなの自殺行為じゃない!」


 カルベネは次々に彼女目がけて飛んでくる石や土の塊を頭突きで受け止めてゆく。攻撃が当たってはいるものの徐々に敵との距離は近くなっている。かすかにラボナの顔に焦りの色が見え始めた。


「ハーピーのガキ後ろに連れてなに考えてるのか、いや何も考えてないわね!そんなに死にたいなら一気に頭を叩き潰してあげる!」


 そう言うとラボナは自分の周りを固めていた大きな岩の一つを動かし始めた。次の瞬間、地面がゴオという音を立て突き上げるような衝撃がつま先から頭まで流れた。まずいこの揺れでカルベネは体勢を崩してしまう。


 ひざに手をつき顔を上げると彼女は自分の足がとられる前に飛び上がっていた。天性の直感なのか敵より一歩先を行っていた。その高さはまるで足元にトランポリがあるようで、普通の人間にはできない動きだ。このまま地面の揺れが収まった頃、反撃に出るつもりだろう。カルベネのことを無鉄砲だと思っていたが案外彼女は賢いのかもしれない。


「あははははは、それで勝ったつもり?出来損ないの悪魔め、甘いんだよ!」


 俺たちの期待とは裏腹にラボナは先ほど動かしていた岩を宙にいるカルベネに向かって下から飛ばした。先ほどの揺れはただ岩を地面に叩きつけていたわけではなく、岩を持ち上げるための予備動作だったのだ。まずい、空中にいるカルベネは避けることができない。いくら根性があっても人の体重ほどもある岩では首の骨を折ってしまう。


 一瞬、この場の時間が時間が止まったように感じた。カルベネの一人を除いて。彼女は空中で体を折り曲げると山羊の足で岩を受け止めた。そのままそれを足場にピョンと跳ね返ったのだ。そして何事も無く地面へと着地した。その動きにラボナは悔しそうに目を細めた。


「チッ小細工ばかりしやがって……あ?」


 次の瞬間、ラボナの目の前で爆発が起こった。俺たちでさえカルベネの動きに目を取られピヨの存在を忘れていた。カルベネの単純な作戦は、今成功したのだ。

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