第31話 町の異変 2
アジトへの侵入を試みる三人、だがなぜか扉が開かない
「なっなぜ?扉が開かない」
シャリンは焦ったように何度も取っ手を引いている。
「落ち着け、だれかが逃げるとき鍵を掛けたんじゃないのか」
「そんなことはない、もとより使っている形跡があってはいけないのだ。いつも掛けていなかった、当日だって掛けている余裕なんてなかった」
そのとき急に彼女がハッとしたように顔を上げた。
「話し声が聞こえる、この先にだれかがいる」
俺は扉に耳を当て音を聞いた。言葉通りかすかに話し声が聞こえる。そしてそれはどんどんこちらに近づいてきている。
「まずいどこかに隠れよう!」
俺は状況がつかめていないフィリアナの手を引き、突き出た壁の後ろに隠れた。シャリンが持っていた松明を急いで消す。
しばらくすると扉が開き、二人の男が現れた。肌の色は緑色でどうやら人ではないようだ。男たちはランタンで辺りを照らし俺たちを探している。
「くそ、だれもいねえじゃねえかお前本当なのか」
「ああ、確かに聞いたんだよ、扉がガチャガチャ音を立てたんだ」
二人はしばらく警戒を続けたが俺たちを見つけることができずに戻っていった。
俺は肺のそこから息を大きく吐き出した。わずか十秒ほどだろうがとてつもなく長く感じた。知らぬ間に額を伝っていた冷や汗をぬぐう。
「はあーなんとか助かったな、あれがオークってやつか」
安心している俺とは対照的にシャリンは険しい顔をしている。
「あいつら私たちのアジトに住み着いているみたいだな、でもなぜそこまでしてここに住みたかったのだろう」
「それはお前たちと同じだろ、住むのに便利だからじゃないか?」
おそらく一部の道をはずれたオークたちが住処を求めて横取りしたのだろう。
とりあえずこれで疑いの目を向けていたフィリアナにもわかってもらえたようだ。
「たっ大変だわ、これを早く伝えなくっちゃ……!」