第322話 地と風の魔術師、デリアとラボナ 1
村から脱出するも二人の人影に退路を阻まれた
俺たちの前に立ち塞がった二つの影、それは女の子だった。それもまだ子供だ。同じ顔に服装、左右の手それぞれに杖を持っている。双子のダークエルフの魔術師というところか。
「お嬢さん方悪いけどそこをどいてくれないかな?」
カルベネの語りかけに二人は馬鹿にしたように笑みを浮かべた。
「ふふ、無理なのわかってるでしょ。あんたたちが町に着いたときから動きはわかってたのよ」
「のこのこ逃げられると思った?」
フィリアナは剣を抜き先頭に立つ。
「残念ですね、子供相手に暴力的なことはしたくありませんが。ヴェロニカさん、ニーナさん援護を頼みます」
彼女は剣を構えると双子に向かって走り出した。二人もその後ろに続く。
「馬鹿ねえ、子供だからって侮らないでよねっ!」
突然地面が揺れたかと思うと目の前の道がまるで強く叩かれたかのように姿を変えた。フィリアナの足元が隆起し、彼女を森の中へ吹き飛ばす。それをかわしヴェロニカが突っ込んでゆく。だが突風が吹き、ヴェロニカさえも地面へと叩きつけられてしまった。
「く、くそっ、こいつら」
「フィリアナ、あんた大丈夫?!」
ニーナが藪の中へと飛び込んでいく。俺も慌てて後を追った。
「だ、大丈夫、まさか地属性の魔法を使うなんて。少し侮りすぎましたね」
フィリアナを起こしていると後ろから双子の笑い声が聞こえてきた。
「きゃははは、ね、言ったでしょ。人を見かけで判断しちゃだめよ」
「人生の教訓にって、まああんたたちはここで死ぬんだけどね」
俺たちはまんまと森の中へ追いやられてしまった。そこには少し開けた場所がありまるで始めからここで戦うよう計画されていたみたいだ。ピヨとポリーンを後ろに隠し、体制を整える。エレナーゼが前に立ち口を開いた。
「どうやら相手は地と風を操るみたいね。でも問題はそれぞれ一つの属性しか操れないのか、それとも二人ともできるのかってところ」
「じゃああたしが探ってみるわ!」
そう言うとニーナは前方に立っている二人へ飛び掛って行った。だが彼女の特攻は地鳴りにより阻まれてしまった。足元が不安定ではニーナにとっては不利だ。
「せっかちはだめよ、まずは相手のことを知らないと」
「そうそう、じゃあ一応自己紹介するわね。私がデリア、そしてこの子がラボナ」
杖を右手に持っているほうがデリア、そして左手に持っているほうがラボナと言うらしい。攻撃が届かなかったニーナは悔しそうだ。すると二人は煙と共にふと姿を消した。
「なっあいつらどこ行ったのよ?!」
「ここだよ、ここ」
左右を見渡すとまるで手品のようにそこに二人が立っていた。俺たちは二人の魔術師に足止めを食らってしまったようだ。