第321話 追っ手
追いかけられるもなんとか村から脱出した
「ふふふ、逃げたって無駄よ……」
嫌味な笑いを振り切り村の外へと逃げ出した。援護のおかげで仲間は無事全員そろっている。
「やっぱり一筋縄じゃいかないな。助かったよみんなありがとう」
「思ったより事態は深刻みたいですね、どうするかは後で決めるとして今は港町へ戻りましょう」
皆、フィリアナにうなずくとすっかり日の落ちた森の道を引き返し始める。来たときとはまるで別の場所みたいで俺たちを拒んでいるかのようだ。自然と早歩きになる。
ローレンが後ろのほうでびくびくとしている。
「こ、ここまでくるのに一日はか、かかったわよね。ああ、こ、こんなことになるなんて、町で待ってればよかったわ」
彼女の言うとおりここから町へ戻るには最低でも半日ほどかかる。だがこちらにはヴェロニカがいる、夜の道でも安全に戻れるだろう。
暗がりの中で動物の声がこだまする。ふと茂みに目をやると光る点がいくつかこちらを見つめている。野犬か?いやあの丸い頭は昼間に見たここの原生生物だ。何頭かで集まって俺たちの様子を物珍しそうにうかがっている。襲ってくるつもりかと思いきや近づくと茂みの中へと逃げていってしまった。
ヴェロニカを先頭に無言で歩き続ける。出てくるときは暗く感じていたが、その暗さに馴れはじめると月明かりで辺りが見渡せるようになってきた。港町に戻ってからどうしよう、まずはあのユニコーンの男に会うべきだろう。彼ならダークエルフのたくらみについて少しは助けてくれるかもしれない。
そういえばここのダークエルフたちは俺たちのことを知っていた。ということは別の場所にいるやつらとも繋がっているということだ。もしかするとそこでは地獄の扉を開けることに成功していて、フィリアナの故郷のように襲われてしまったかもしれない。無事撃退できたならいいが……。
あの女の話では別の世界から来たダークエルフたちが力をもたらしたと言っていた。そうなれば叩くべきはその別の世界から来たエルフたちだ。このまま世界中をめぐって小さな村を潰して回っても意味が無い。それにはまず、あの手紙のなぞを解かなくてはならない。別の世界のエルフたちは一体なにを探しているのだろう。おそらくその目的のものはとてつもない力を秘めているに違いない。そしてそれを使って世界征服するつもりなのだ。やつらが手にする前に俺たちが見つけ出さなくては。
そんなことを考えながら歩いていると先頭のヴェロニカがふと足を止めた。カルベネが彼女の隣に並ぶ。
「ははは、やっぱりそうだよなぁーそう簡単に逃がしてくれるわけないか」
ふと月明かりが雲に隠れた気がしたが、森の中から姿を現した二つの影が味方ではないということだけはわかった。