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第316話 終わりへの旅 1

子守りをしながら泊めてもらった宿を掃除した

 嫌そうに目をこするヘカクトルを連れテーブルへとつかせた。スープをよそいパンを皿に乗せてあげる。


「ほら俺の仲間が作ってくれたんだ、あんまり豪華じゃないけどおいしいぞ」


 彼は目を細め眉間に皺をよせている。寝起きで機嫌が悪いみたいだ。しょうがないので潰したやわらかいじゃがいもを口に入れてあげた。少しかじっては口を動かしている。まるで介護士になった気分だ。その間もちょっと目を離していると口に食べ物を入れたまま眠ってしまう。金持ちなのはわかったが一体どういう悪魔なのだろう?ジェフもそうだが悪魔と言っても恐ろしいやつばかりじゃないようだ。


 そんな感じで彼の介護をしているとお付の女が帰ってきた。


「ご苦労様です、とてもきれいになっていますねありがとうございます」

「いえこちらこそ泊めてもらってしまって。あっ勝手に夕飯あげてしまいました、すいません」

「あら、ごめんなさい迎えに来るのが遅くなってしまって。大変だったでしょう、よく起きてくれましたね。お待たせしました、さあ帰りましょう」


 彼女は寝ているヘカクトルの肩を揺すると手を引いて帰っていった。きっとあのワイバーンで帰っていくのだろう。怖そうだが一度乗ってみたい気がする。


 翌日俺はジェフのもとを訪れダークエルフの場所について聞いた。本当はあのユニコーンの男に聞くのがいいのだうが、きっと止められてしまうのでやめておいた。


「本当に行くのかい?ちょっと遠いけど」

「はい、話を聞きに行くだけですので」


 彼はしょうがないな、と道を教えてくれた。ここから森へ入り小道をずっと歩いていったところにあるようだ。礼を言い最低限の荷物と装備を整え出発した。のどかで暖かな木々が俺たちを迎えてくれた。来る前はどんな恐ろしいところかと身構えていたが、今は心が軽い。気温もちょうどよく、いい散歩日和だ。


 夜行性のヴェロニカには申し訳ないが明るい中を歩くのは気持ちがいい。木陰に目をやると岩と木の根の隙間で何かが眠っている。短い毛に丸い頭、とかげのような手足をしている。俺は起こさないようにそーっと近づいた。ピヨも後ろから一緒に見ている。


 全部で三頭、犬のように丸くなって身を寄せ合っている。結構大きい、肉食ではないといいが。カルベネが隣でのんびりと歩いている。


「あーあ、でもさここまで長かったよなー。結構色々、旅したんじゃない?いい土産話ができたなー」


 言われて思い返せばいままでの人生からは想像ができないような体験をしていた。おそらくほとんどの人がしないだろう。ここですべて物事が解決するかはわからないがもしそうなら嬉しさと共に少し寂しさも感じる。俺はこの旅が安全に終わることを願いながら、木漏れ日が差し込む森を歩き続けた。

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