第314話 眠れる王子 1
町長に宿へと案内され、つかの間の休息を楽しんだ
だが翌日俺たちのもとへやって来たのはジェフではなくあのユニコーンの男だった。
「ジェフに頼まれて町を案内することになった、本当は気が進まないが友人の頼みだ仕方ない」
男は仕方ないといった様子で俺たちを町へと連れて行った。噴水のある広場には大勢の人が集い、賑わいを見せている。いつものことだがエレナーゼとヴェロニカ、ローレンはお休みだ。
「素敵な場所ですね、まさか絶極大地がこんな場所だったなんて。なんだか身構えてしまいましたわ」
フィリアナが辺りを見渡して朗らかに笑う。
「本当よ、まあ実際にダークエルフたちに会ってみないことにはなにもわからないけどね。ねえ、あれなに?」
ニーナの指差す先にみんなの視線が集まる。遠くのほうに大きな青い生き物の姿が見える。あれはなんだろうか、鳥?大きな怪鳥が町中に姿を現したのか?じっとしていて暴れる様子はない。目を凝らすと羽は無く、表面がつるつるしているようだ。
「あっ、あれは、どうしてこんな場所に?!」
隣にいるユニコーンの男も驚いている。というより慌てているといったほうが正しい。俺たちを置いて怪鳥のほうへ行ってしまった。
「ちょっと待ってください、あれはなんですか?」
「あれはヘカクトル様だ、なぜ彼がこんな場所に?」
ヘカクトル様?あの怪鳥の名前か?だんだん近づいていくにつれその全貌がはっきりしてきた。大きな翼に恐竜のような顔、これはもしかして竜ではないか?!あのファンタジー界の人気者、ドラゴンというやつではないか?そうだとわかるとなんだかとてもわくわくしてきた。この世界にはさまざまな生き物がいるがまさかドラゴンに会えるなんて思わなかった。俺と同じようにみんなも驚いている。
「なにこれ、まさか竜?なんで町中にいるのよ!」
叫ぶニーナにセシリアが冷静に答える。
「これはワイバーンね、でも背中にかごがついているのを見るとだれかが連れてきたみたい」
確かによく見ると背中に人が乗れそうなかごがついておりだれかを待っているのかじっとしている。ユニコーンの男はそこへ早足で駆け寄ってゆく。
「ヘカクトル様、来るなら言ってくださればよかったのに。どうしてこんな田舎へ?」
どうやら語りかけているのはワイバーンの足元にいる少年のようだ。隣には身なりのきちんとしたお付の女性がいるが、少年自体は寝癖のついた髪にだぼっとした寝間着だ。まさかこの子がヘカクトル様でこのワイバーンに乗ってきたのか?とてもそんなえらそうには見えないが、ユニコーンの男は頭を下げている。そして答えているのは隣にいるお付の人だ。
「ちょっとほったらかしの宿がありまして、その掃除ついでに用足しできたらいいかなと」
「そうでしたか、掃除なんて業者にお任せすればいいものを」
「ふふふ、そのつもりですがひさびさですのできちんと管理されているか見ておこうかと。あれ、その方たちは……?」
彼女は男越しに俺たちを見た。こうして話ている間でも少年は半目でぼーっとしている。どういう関係かわからないがとりあえず警戒されないよう自己紹介をした。