第309話 船出 1 (押し絵あり)
ピヨの魔法の技術に感銘を受けたエレナーゼ
宿へ戻り夕食をおごってもらった。緊張が抜けるとものすごく空腹だったことを思い出す。ひたすら目の前に並んでいる食料をかきこんだ後、ベッドに横たわりそのまま目を閉じた。
どれくられ寝ていたのだろう、今朝なのか夜なのかすらわからない。辺りを見渡してやっと自分の置かれている状況がわかったぐらいだ。確か俺は狼男を森の奥に追いやって、それから夕食を食べて……そういえばあのあと村人たちはどうなったのだろう。
きしむ体を起こして外へ出てみた。晴れ渡った青い空に涼しい風が吹いている。心なしか邪気が晴れたみたいだ。そこへ宿屋の男がやってきた。
「おーやっと起きたか、大丈夫かお兄さん。ぐったりしてたから心配してたんだ。あんたの仲間ならさっき買い物に行ったぞ」
「そういえば船は出ていますか?俺たち絶極大地に行きたいんですが」
「あーそうだなぁ、大きな船は出せないがあんたらぐらいなら届けられるだろう。でもその小さな船だったら本来行くべき大きな町へは向かえないと思うぞ、それでもいいのか?」
大きな町に着かないのは俺たちにとっては逆に好都合かもしれない。あまり大勢に気づかれたくはないのだ。俺は荷造りをしながらみんなが帰ってくるのを待つことにした。
外の適当な木に腰掛けて肌寒いそよ風に当たる。いつの間にかそばにエレナーゼが横たわっていた。ポリーンは後ろのほうでいつの間にか干しておいた洗濯物を取り込んでいる。しばらくするとみんなの楽しそうな声が聞こえてきた。
「あ、あんた起きたの。支度できた?ってか船でてるの?」
「ああ俺たちのために出してくれるってさ。それしまったら港へ行ってみようか」
ニーナは荷物を片手に宿へ戻っていった。昼食を終えた後、俺たちは港へ向かった。そこでは始めに出会ったミノタウロス族の女が迎えてくれた。
「待ってたぞ、その、今回は申し訳なかったな。まさか彼女がそんなことをしていたなんて、私は全く気がつかなかった。以前から外へ行ってみたいとは言ってたけど」
「狼男たちはどうなりましたか?」
「一匹は捕まえた。でも他の二匹は逃がしちまったよ。本当ならまだあなたたちにいて欲しいけど、狼男ハンターしとてね」
そう言ってがたいの良い女は笑った。残念ながら俺はしばらくこの島には近寄りたくない。俺たちが船に荷物を積んでいると噂を聞きつけたのか村中の人が集まってきた。
皆、物珍しそうにこちらを見ている。俺は小さく手を振ってみた。英雄としてたたえられているのか、奇妙な変人として見られているのかはわからないが船が港を離れると手を振り返してくれた。この様子にニーナは不機嫌そうだ。あえて船の壁に隠れている。それに対し元気一杯になったピヨは、はしゃいでいる。
「ばいばーい、まったね~~」
「なにがまったねーよ、こんな島二度と来ない」
俺は心の中でニーナに賛同した。