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第302話 人狼ゲーム 2

有力な情報が得れないまま新たな被害がでてしまった

「今回の遺体も致命傷はここの噛み跡だ。だけど腕に一度噛まれた形跡があるし体も泥だらけだった。肩にも傷がある。きっと出くわして必死に逃げようとしたんだろうな」


 俺は医者の説明にうなずいた。この男は必死に抵抗し、逃げ、その結果狼は一撃で仕留めきらなかった。このことからするとメアリーは狼のことを知っていたことになる。だがもし彼女が指揮していたなら彼女がいない今、狼たちは羊を盗むことなんてしないはずだ。


 俺たちは一度このことをみんなに伝えるため拘留所へと戻った。そこでセシリアが一番に口を開いた。


「これはきっと狼男の仕業ね。ウェアウルフって言うのかしら」

「狼男ってそんなおとぎ話じゃないのよ、満月の夜に変身するって言うの?」


 鉄格子越しにニーナが眉を曲げる。他のみんなも同じような反応だ。それにまさか一番否定しそうなセシリアの口から聞くなんて思わなかった。


「ウェアウルフは実在する。あいつらは普段は人に化けて暮らしてる。犯人は船乗りの男、ここの人たちはみんなオビテュロスとミノタウロスだけど彼らはきっと人間の姿よ。それにあのメアリーとかいう女、彼女もグルね」

「ちょっと待ってください、メアリーさんは殺されているんですよ。それに船乗りの方に恋していたって」


 フィリアナの言うとおり、メアリーは船乗りの男と恋に落ちていたのだ。


「だからよ、彼らの正体を知っていて脅したのよ。理由はわからないけどみんなにばらすってね。それで不要になって殺した。実際に殺されたもう一人の男は逃げた形跡があったでしょ。夜に見回りをしていて姿を見られたから殺した」


 それなら合点がいく。メアリーは何度も目の前で狼男に変身するのを見ていたのだ。だからまさか自分にその牙が向くなんて思ってもいなかった。それに内通者がいたからこそスムーズに盗みもできたし俺たちが調査をしようとした時、怪しいとわざわざ大声をあげた。本当の生贄の羊は俺たちだったのだ。


 この海に囲まれた島には小さな船なら隠して置ける場所はいくらでもある。だとすれば今もまだ島の周辺にいるはずだ。そして再び夜が訪れるのを待ちわびている。


「次の襲撃場所に先回りしよう。海が近い羊農家を探すんだ!」


 俺はちょうど戻ってきた見張りの男に羊農家の場所を聞いた。


「ええ、なんでそんなことを教えなきゃ」

「また死人がでてもいいわけ?!犯人がわかったのさっさとあたしたちをここから出しなさい!」


 牢屋の中から叫ぶニーナの迫力に男はたじろいでいる。


「そんなこと言われたってなあ、俺には決められないし」

「一刻を争うんです、お願いします協力してください。そうだ、見張りとして一緒に来てくれたらいいですよね?」


 見張りの男はえー、とあからさまに嫌な顔をする。だがこの事件を解決したい、もとい自分は殺されたくないという気持ちがあるらしく葛藤(かっとう)している。


「し、しょうがないな、その代わり俺はなにもしないからな」


 ぐすぐす言いながらも海に近い次のターゲットとなりそうな羊農家の場所を教えてくれた。

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