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第301話 人狼ゲーム 1

証言を聞き回るも有力な情報は得られなかった

 考えられるのはその船乗りの男が狼を持ち込んだことだ、しかしここにいないのでそれも違うのだろう。俺は合流した二人とともに村の外でキャンプをすることにした。小さな赤い火が燃えているのをぼーっと見つめる。完全に行き詰ってしまった、勢いで出てきたはいいもののここまでなにもわからないとは思っていなかった。ため息ばかりがもれてゆく。


「あの、ヒロアキさん私気になることがあって」


 そんな俺の隣にポリーンがやってきた。


「私、狼の足跡を見たんです。すごく大きくて普通の犬のとは全然違いました。えっと……それで変なことを言ってるとは思うんですけど足跡の感覚が四足とは違うというか。二本の足で歩いているような感じなんです」


 二本足、やはり俺が見たのは間違いではなかったのかもしれない。狼ではなく狼男のような化け物が羊たちを襲ったのだ。問題はだれが持ち込んだのか、そしてだれが指揮しているのか。


 そのとき後ろから見張りの男がやってきた。エレナーゼは咄嗟にポリーンを茂みの中に隠す。


「そんなところにいたのかまったく、で、なにかわかったのか?」

「いやそれがまだ何も」

「そうかよだと思った、ほら牢屋へ帰れ。お前たちは怪しいんだ」


 詳しい話を聞けないまま俺たちは牢屋へと戻されてしまった。一日中閉じ込められていた残りのみんなははぐったりとしている。


「それで、なにかわかったの?あたしたちもう疲れたんだけど」


 壁にぐにゃりと寄りかかりながらニーナが愚痴をこぼす。


「あのうるさいエルフがいないからたとえ肥溜めでも天国さ」

「じゃあここから出て肥溜めにいきなさいよ」


 カルベネとセシリアが互いに皮肉を言い合っている。こう見えて結構仲がいいのだ。


 結局、進展が無く俺たちは牢屋の中で夜を過ごした。翌日、見張りの男が頭を抱えてやってきた。


「ああ、大変だ、どうしてこんなことばっかり」

「どうしたんですか?」


 男はため息をついて目の前の椅子にドカリと座った。


「どうしたって、また殺されたんだよ。夜見張りに行くって言って帰ってこなかったから朝方奥さんが見に行ったら死んでたんだと」


 また新たな犠牲者がてでしまった。その後も話を聞くとその羊農家は海岸の近く、そして羊が少し盗まれていたことがわかった。俺は再びシャリンとセシリアを連れ医者に会いに行くことにした。


 村は異様な雰囲気で各自、目を泳がせながらひそひそと噂話をしている。これはまるで人狼ゲームのようだ。村人と人狼にわかれだれが犯人なのか当てる推理ゲームだ。いや、これは本当に人狼ゲームなのかもしれない。人狼は昼間他の村人に化けているという設定なのだ。狼男が実在するかはわからないがこの世界なら絶対にないとは言えない。


「やあまた君たちか、今回はメアリーの時とは少し違うみたいなんだ」


 医者はそう言って遺体にかけられた白い布を少しずらした。

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