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第299話 生贄の羊 2

自分たちの無実を証明したいと申し出た亜李須川

 一度出て行った監視の男は昼ごろ戻ってきた。


「よし、半分は出ていいぞだけと半分は残れ」


 俺の提案が通ったようなのでシャリンとピヨ、それからセシリアを連れて外へ出た。カルベネが心配だが今はセシリアの戦力が必要だ。


 まずはメアリーの遺体の調査だ。なぜ彼女が殺されたのか、狼によるものだとしてももしかしたらだれかが見ていたかもしれない。きっとこの森に潜んでいるだろうから巣を見つけて早いところ始末しなくては。


 俺は監視の男に遺体を見せてくれるよう頼んだ。彼は嫌な顔をしたが必死に頼み込んだ結果、見せてくれることになった。俺たちは村にある小さな病院へと案内された。


 医者は黙って彼女にかけられている白い布をめくった。まだ息を引き取って間もない彼女は寝ているみたいだ。傷跡は綺麗にぬぐわれているが痛々しい牙の跡が細い首にはっきりとついている。すごい力で一瞬にしてのどを押し潰されたような感じだ。だが不思議なことにこれ以外の傷跡は見当たらない。のどに直接飛びつかれたのか?でも傷は前から噛み付かれたように見える。そうなれば抵抗しようともがいたりするはずだが腕には狼の爪あとはない。


 俺は思っていることを医者に伝えた。


「うむ……そうなんだ俺も不思議に思っていてな、普通、防御創といって抵抗の跡がみられるんだがそれがないんだ。服もきれいなまま。そうなると親しい人の犯行の可能性がでてくるが相手が狼となるとそうも言えないからな」


 彼女が狼を率いていて裏切りにあったのか?いや、それは非現実的だ。第一姿を見られず狼たちを操作することなど不可能に近い。次にやるべきことは証言を集めることだ。


 俺たちは被害にあった羊農家を訪ねた。信用なら無いよそ者の来訪に怪訝(けげん)な顔をしたが、それでもぽつりぽつりと目撃談を話し始めた。


「ほらここさ、柵が壊されちまってる。羊を守ってる番犬がいたんだが、はぁ……かわいそうになビリー。声を上げる暇も無く一瞬でバラバラにされちまった」


 どうやら俺が訪ねたのはあの噂されていた番犬のいた家のようだ。柵は食い破られたように破壊されている。どうも人間が道具を使ってやったものには見えない。この家のほかにも数軒回ってみた。


 その結果わかったのは羊たちの足跡は海岸へと続き、そこで途切れていること。そして羊はそこで一匹も殺されていないということだ。まさか狼たちは海へとさらっていったのか、だが一体何のために?


 日が暮れそろそろ探す当てもなくなった頃、逃げ出していたエレナーゼとポリーンが茂みからそっと姿を現した。

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