第295話 羊島のオビテュロス族
羊島についてまず羊に出迎えられた
彼女の言うとおりあまり人はいないようだ。そのおかげで特によそ者だと絡まれる様子もない。この閑散とした島で気のきく少女と出会えてラッキーだった。
少しして船の様子を聞きに行った少女が帰って来た。
「お待たせしました、ごめんなさい一番早い船でも三日後になってしまいます。それでもいいですか?」
「まあないなら仕方ないな、どこか泊まる所はありますか?」
「それなら狭いですが一応あります。今は船があまり来ないのであいていると思いますよ」
俺たちは引き続き少女につれられ村の中を歩いた。時折すれ違う人たちがじろじろとこちらを見てくる。
「あっそうだまだ名前言ってなかった、俺は亜李須川 弘明よろしくお願いします」
「私はメアリーと言います。みなさん種族がバラバラのようですが何かわけがあるんですか?」
メアリーはこちらを振り返って全員の姿を見た。
「いやたまたま旅をしてたら仲間が増えていって。ところでメアリーはサテュロスですか?」
「大きくまとめるとそうですが、私はオビテュロスと言います。先ほどであった彼女はミノタウロスと呼ばれています。まあ厳密にミノタウロスではないのですが」
またもや聞いたことの無い種族だが羊のようなサテュロスをオビテュロスというらしい。ミノタウロスは確か頭が牛の化け物だった気がするが、きっと似ているのでそう呼ばれているのだろう。
「さあ到着しました部屋はせまいですが自由に使ってください」
案内された先には二階建ての宿屋があった。この村にしては大きな建物だ。中に入ると管理人の男が暇そうに本を読んでいた。
「あーこんな時期にお客さん?あんたら貿易船の人じゃないよね。もしかして観光?」
俺は三日後に船に乗ることを伝えた。
「ふーんそう、三日後ね、悪いこと言わないから外へあんまりでないほうがいいよ」
「あのなにか不都合なことでもあるんですか?」
俺はこの島に着てから感じていた不穏な空気について聞いてみた。
「最近ここいらで狼がでるんだと、ほんで羊の柵を壊してみんな持っていっちまうんだと。森に昔から狼はいたけど村の近くに来ることは滅多になかったんだ。どうやらとんでもなくでかくて凶暴なのが一匹いるみたいでね、夜は気をつけなよ」
船がいつもどおり動かないのはこのせいかもしれない。みんな狼対策に必死でそれどころではないのだ。とりあえず男に言われたとおりなるべく外へは出ずひっそりと過ごすことにした。
とは言ってもこれから先のたびに必要な物を買いそろえる必要があるので俺はシャリンとともに買い物へでかけた。