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第291話 小さな渡し舟

水和のもとにもう一人、人魚が現れた

 水和に抱きついている女の子は彼にすぐに帰るよう催促している。


「地上はだめだって言われてるでしょ、あいつら人魚の肉で永遠に生きられると思ってるんだよ!」

「う、うんわかってる。けど今回はたまたまだよ、大丈夫だから」

「え?!たまたまってなに?なにかあったの?あ、わかったこの変態に捕まったんでしょ!」


 そう言って女の子は俺を睨んだ。おじさんと呼ばれた上に誘拐犯にされてしまった。


「違うよ!亜李須川(ありすがわ)さんは助けてくれたんだよ。だからお礼をしようと思って。羊島までつれていくんだ」


 彼女は信用できないといわんばかりにこちらをじっと見つめてくる。


「ええと……俺一人じゃないんだ。あそこに仲間がいて、みんなで絶極大地に行こうとしてたんだ。失礼かもしれないけど君は女の子、だよね?」

「仲間って全員女の子だ、やっぱりこの人変態だよ!あと僕は男なんだけど、ほらねこんなこと聞くなんてそうだよ!」


 この種族はみんなこうなのだろうか?長髪の男の子はぐいぐいと水和の肩を揺さぶっている。


「もう清水(きよみ)、失礼だよ。ごめんなさい船を手配できるか聞いてきますね」


 名前まで女の子みたいだ。なんて言ったら怒るだろうが、とりあえず先には進めそうだ。一旦みんなのところへ戻り荷物をまとめることにした。少ししてキャンプを片付け終えた頃、二人がやってきた。


「お待たせしましたこちらです、大きな船ではありませんが一応全員乗れるかと」


 水和に導かれてついて行くと海岸の端のほうに古そうな船が二隻とまっていた。どちらも小さく荷物が全部乗るかわからない。仕方ないので体の大きなローレン、フィリアナ、ニーナにまず乗ってもらった。それだけで一杯になりそうだ。


「ごめんなさい全員乗るのは難しそうですね」


 頭を下げる水和にどうしようか悩んでいると水の中から一人の男が顔を覗かせた。歳は中年ぐらいで頭髪は薄め、それからサテュロスのような二本の角が生えている。


「おお、こんな団体さん初めてだ!あっ大丈夫、みなさんをきちんと運んでいきますから」


 中年の男は愛想よく笑顔を浮かべる。


「おっとちょいときついですかね、少し待っててください今予備の船を持ってきますから」


 彼は一度海に潜るとどこからかもう一隻、船を引いてきた。それでもきついがおかげで荷物まで乗せることができた。


「よかったよかった、みんな乗りましたね。ところで、その、これだけ船を出すとなりますと……やっぱり代金がかかってしまうんですが、大丈夫ですか?」


 男は手をこすりながら申し訳なさそうに聞いてきた。まあこれだけ大勢を運んでくれるのだから当然だろう。俺の返事を遮るように水和が答えた。


「あの!それなら僕がだします。みなさんには助けていたので」

「なに言ってるの水和そんなお金ないじゃん!あのね、水和はおじいさんと二人暮らしなの、だからだめだよ」


 話を聞いていた清水が急いで止めに入る。なるほどだから危険を冒してまで漁村の近くにまで来ていたのか。きっと自分の国で魚を買えないほどお金がないのだろう。


「気持ちだけで十分だよありがとう」

「じゃあ半分だけでも、あ、そうだ僕が手伝うので安くしてくれませんかお願いします」


 必死に頼み込む水和に中年の男は困惑した様子だ。


「ふぅしょうがないね、そこまで言われちゃ断れない。君が手伝ってくれるなら少しだけ安くしとくよ」 

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