第285話 意外な仲
反省したカルベネは自分の隠し金を手渡し退路を断った
カルベネはいつものようににんまり笑うと俺の背中をばしっと叩いた。
「そういうわけだからよろしくな、兄さん」
「なーんか調子いいんだよな、だけどもう次はないからな」
彼女は生返事をするとふらっとどこかへ行ってしまった。
小屋へ戻るとシャリンが荷物の整理をしていた。
「あっアリスガワ、みんな昼食の準備の手伝いに行ったぞ。それと少しだが旅に必要な物資をそろえることができた」
「そっかそれはよかった、ありがとう。俺たちも行こうか」
俺の言葉にシャリンは嬉しそうにうなずいた。昼食は白身魚の焼いたものとバナナのような果物、それからザリガニだった。特にザリガニは彼らの中ではそこそこなごちそうらしい。少し泥臭かったがこちらの世界に来てからはもう慣れてしまった。
楽しそうに食事をしている最中ふとセシリアの姿が目に止まった。彼女は会話の輪に入ることなくお行儀良く食事をしている。
「なあ、セシリアちょっとお願いがあるんだけど」
「え、なに?」
彼女は毎度のごとく迷惑そうに相槌を打つ。
「あのーカルベネのことなんだけど、知ってるよな。そこでさ、セシリアに見張ってて欲しいんだよね。酒を飲み過ぎないように、彼女中毒だから」
「はぁ?なんで私があのゲロ……、うっ、吐しゃ物女の面倒なんか」
セシリアはさも嫌そうに口元を押さえた。
「本当は俺がやるべきなんだろうけど、自分のことで精一杯で正直面倒なんか見てられないんだ。それにすぐ目を盗んで逃げられちゃうしね。その点セシリアは目も鋭いし、力もあるし適任だと思うんだよな」
「あっあたしも賛成!」
俺の話を聞いていたのかニーナが元気良く手を上げた。みんなもわかっていないが賛成と声を上げる。
「ええっ、ハア……やっぱりさっさと帰ればよかった。なんで私があのゲロ女の面倒なんか見なきゃいけないのよ」
セシリアはぶつくさと文句を言っているが彼女以上に余裕を持って見張れる人がいないのだ。このことはとりあえずセシリアに任せるとして俺はこれからのことをレーミアに聞いた。地図を広げ行き先を説明する。
「ふーん絶極大地ねぇ、ごめん私はよくわからないな。でもこの先の漁村まではつれていけるよ。ここ結構大きいからきっと乗せてくれる船を見つけることができると思う。失った荷物もここでそろえられるかもしれないね」
さらに詳しく聞くとどうやらその漁村は人間が支配している場所らしい。船はありそうだが今までの経験から乗せてくれるかわからない。彼女も実際には入ったことはないようだ。だがここにいても一向に進まないのでレーミエの言葉を信じ、明日出発することにした。