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第284話 仲直りの金

カルベネのだらしない行動に怒りを感じた亜李須川

 こうしていても仕方が無いのでとりあえず外へ出てレーミエたちの手伝いをすることにした。なにか作業をしていれば気分も紛れるだろう。それにこれ以上嫌われてしまってはここにいられなくなる。


 俺は何事もなかったかのように彼女とその家族に挨拶をした。朝一番であがって来た魚を運び、大きさや種類ごとに仕分ける。だがそんな簡単にはいかなかった。作業をしつつも胃がもやもやと苦しく、ずっと頭から離れない。


 なんとも形容しがたい気持ちだ。今まで生きてきて感じたことの無い気持ちだとも言える。子供の頃、友達とけんかをした時とも違う、怒りのような焦りのようなそれでいて寂しいようなそんな気持ちだ。自分自身どうしてこうなってしまっているのかわからない。


 この先カルベネを連れて旅を続けられるのだろうか?そもそも彼女は俺たちのことなどはなからどうでもよかったのではないのか?仲間だと思っていたのは俺だけだったのかもしれない。それならば別にこれ以上かまう必要もないし、引き止めることもしなくていい。こんな気持ちになるのは今までにここまで強い思いを抱く仲間がいなかったからかもしれない。


 そんなことを考えているとあっという間に作業は終わってしまった。レーミエと家族たちは俺の働きぶりに関心している様子だ。お昼まで休んでいて欲しいと言われたが、正直みんなのところへ戻りたくない。なんとなく誰にも会いたくないのだ。


 ぼーっと浮島の端を歩く。子供たちの元気な笑い声が遠くに聞こえる。俺は近くの適当な木材の上に腰を下ろして水面を眺めた。にごった水に自分の顔が映る。俺が帰ってこなければきっとみんな心配してしまうだろう。だが出てくるのは重たいため息ばかりだ。


「よお、兄さんどうしたのそんなしけた顔して」


 聞きなれた声が頭上から降ってきた。まさかと思い立ち上がると背後にカルベネの姿があった。いつもと変わらぬ顔でへらへらと手を振っている。


「どうしたってなぁ……」


 すると彼女は俺の手に袋を握らせた。ずっしりと重く中には金貨がいくつか入っている。このお金、まさかどこかから取ってきたのか?!


「取ったんじゃないよーそんな顔するなって。それは私の隠し財産、来るときに持ってきた(きん)を売ったんだ。さっきこの村にたまたま商人が来ててな、安く買い叩かれたけど損害の分ぐらいにはなっただろ」


 隠し財産……?なんのことかわからない俺にカルベネは続けて口を開いた。


「途中で帰りたくなったときに使おうと思ってたやつだよ、でもこれで帰れなくなっちゃったな。その……悪かったよ自分でも悪いと思ってるよ。これは本当だ、だれも止めてくれなかったなんて人のせいにしてるけど自分でもわかってたんだ」

「あっ、えっと、俺もごめんな、殴ったりして」


 ということはまだ一緒に旅をしてくれるということか。面倒なことになったなと思いつつ胸のつかえが取れたような気がした。

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