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第283話 酒に飲まれた者

カルベネはアルコール中毒症だということが判明した

 俺はうなだれるカルベネの肩にそっと手を置いた。


「それはな、病気だ呪いじゃない」

「じ、じゃあ治るのか?兄さんどこで薬が売ってるか知ってるのか?」


 はやるカルベネをそっと押し返した。


「落ち着け、この病気には基本的に特効薬はない。なぜならお前は酒の中毒だからだ。俺は医者じゃないからよくわからないけど、少しずつ量を減らしていくしかないと思う」


 彼女はああ、そうかとつぶやいた。


「明日少しわけてもらえるか聞いてみよう。夜遅いから今日はもう休憩しよう」

「はあ……悪いな兄さん、こんなことになっちまって。迷惑かけるな」


 俺は彼女を支え小屋まで戻った。今まで彼女の異変に気がつけなかった俺のせいでもある。時間はかかりそうだが協力してやっていくしかない。


 翌朝、俺はセシリアの声でたたき起こされた。


「ねえ、起きなさいってば、あの飲んだくれのサテュロスが大変なことしてるわよ」


 さわやかな目覚めから一転、胸がぎゅっと痛くなった。


「え、大変なことって……」


 セシリアに引きずられ俺は外へ出た。メリュジーヌの男がこちらへ駆け寄ってくる。


「ちょっとあれあんたらの仲間だろ?どうにかしてくれよ!」


 男に睨まれ小屋へ入ると鼻を突くようなアルコールの臭いの中でカルベネが寝転んでいた。辺りには空になったつぼが散乱している。


「おー兄さん、おっはよぅ元気にしてたか?」

「お前なあ……これはどういうことだよ。これじゃ泥棒だろ!」


 怒る俺を(かたわ)らに本人はまったく能天気だ。


「いやーたまたま入ったらさぁーいいものがあって、ちょいと拝借してるだけよ。なぁーこれでいつもの調子に戻ったし、一件落着ということで」


 気がついたときには彼女の頬をなぐっていた。カルベネは体勢を崩しながらも信じられないという目でこちらを見ている。


 息が上がり体が震える。


「いい加減にしろよ!!昨日あれだけやってまだ迷惑かける気か?酒の量を減らすっていったばかりじゃないか!」

「なあなあ落ち着けって、いてて、殴ることはないじゃんか。減らすよ減らすけどさぁー徐々に、だろ?」


 裏切られた気持ちと今までの怒りが混ざり合いどうにも抑えられなくなっていた。後ろから来たシャリンに肩をつかまれた。


「落ち着けアリスガワ、なにがあったのかは……大体想像できるが一旦ここは引こう。あいつは私が連れて行く」


 シャリンに促され俺は小屋の外へ出た。この酒の持ち主である男にも謝り金をはらった。頭を冷やすため小屋へと戻る。確かに殴ったのは悪かったが俺は裏切られたことがとても悲しかった。


 ピヨとポリーンが心配そうに近寄ってきた。ピヨは何も言わず俺の頭を撫でてくれた。


「ハハ、ありがとうな。ちょっとカルベネがいたずらしてな、それで怒っちゃったんだ。あとで謝っておかないと」

「そうでしたか、お洋服がかわいたのでおいておきますね」


 ポリーンは綺麗にたたまれた服を静かに横に置いた。

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