第260話 砂漠の生命
力を合わせなんとか大サソリを倒すことができた
キャンプを設置した後、早速オアシスの水で顔を洗った。ひさびさのきれいな水に心が安らぐ。ピヨとポリーンは浅瀬で楽しそうに遊んでいる。俺はふとピヨに買ったお土産を思い出した。小さな陶器でできた水笛だ。
「ピヨ、ちょっとこっち来て。町につれていってあげられなかったからさ、これお土産」
ピヨは水笛を手に取ると不思議そうに眺めだした。
「かわいいけどこれなに?」
「こうやって水を入れて後ろから吹くんだ。音が鳴るだろ」
俺はオアシスに沈め少し水を入れた。ピヨが吹くと鳥の鳴き声のようなかわいらしい音がなった。
「わーすごい!」
気に入ってくれたようで笑いながら笛を吹いている。オアシスは波がなくとても静かで水面はまるで鏡のようだ。かなり大きさと深さがあるようで小さな湖ぐらいある。深い場所を浅瀬から覗くと魚影が見えた。赤やオレンジといった鮮やかな色をしており、大きなひれが特徴的だ。
近くによって見るとまるで金魚のようで、これは奴隷商人が売っていたバタフライフィッシュではないか?でももっと小ぶりだったような気がする。目の前にいるのは結構なサイズで、育ちすぎてしまった屋台の金魚みたいだ。大きなひれを優雅に動かしゆっくりと水中をただよっている。
後ろからバケツを持ったヴィーがやって来た。
「あ、お疲れ様です。すいませんサソリの死骸片付けてもらってしまって」
あの後彼らに遠くへ運んで埋めてもらったのだ。
「いえいいんです、本来は私たちが倒すべき相手でしたから。怪我はありませんでしたか?」
「はいなんとか無事です。そうだこの魚、何か知っていますか?」
彼女は脚を水につけ奥を覗き込んだ。
「これですね、これはバタフライフィッシュといいます。蝶みたいなヒレがありますでしょ。この魚は水がきれいで流れが弱い場所にしか住めないんです」
野性のものとなるとかなり違うんだな。俺はこの魚たちが人間に乱獲されないことを願った。ふと水辺を見渡すと遠くのほうにグリフォンの姿が見えた。だが俺が襲われたのとは違い、一回り以上小さい上に集団でいる。しかも下半身がライオンではなく馬だ。
「ヒッポグリフォですね彼らはグリフォンの親戚です。グリフォンはご存知ですか?」
「え、ええまあ、ヒッポグリフォなんていう生き物もいるんですね」
グリフォンなら嫌というほど知っている。高いところで孤高に暮らしているグリフォンに対し、ヒッポグリフォは集団でしかも地面の近くに生息している。彼らは交互に顔を上げてオアシスの水を飲んでいる。
「翼がありますがあまり飛ぶのは得意ではないみたいなんですよね。時折砂漠ですれ違います。臆病なんで近づくとすぐに逃げてしまいますね」
性格まで正反対だ。とりあえずさらわれる心配はなさそうだ。