第258話 潜む大サソリ 3
連携した動きによりサソリにダメージを与えることができた
うまいこと背につかまったシャリンはセシリアが作った傷口に自分の短剣を叩き込んだ。勝った!と思ったのもつかの間、再びサソリは動き始めた。シャリンもなぜ、という顔をしている。
「シャリンさん早く降りてください!!」
フィリアナの叫びもむなしく、なんと伸びてきたハサミにつかまれてしまった。
「ぐっしまっ……!」
彼女は苦しそうな表情を浮かべている。まずいこのままではあの大きなハサミで真っ二つにされてしまう。いくらすばやいシャリンとはいえ、体は生身の人だ。サソリにとってはやわらかい肉と変わりない。
俺は短剣を片手にまっすぐにサソリに向かっていった。無謀だとわかってはいるが今、気をそらさなくてはシャリンが死んでしまう。砂に足をとられ思ったように走れない。どんどん重くなる足を無理に動かしサソリへと近づく。当然のごとく相手は俺を捕まえようとハサミを開き迫ってくる。
自分の体に動け!と念じ、体をかがめ半分転ぶようにしながら間一髪のところで攻撃をかわした。頭上を黒くて大きな甲殻が通り過ぎてゆく。地面に這いつくばりながら手汗ですべりそうな短剣を握りなおし、力の抜けた下半身に鞭を打つ。眼前へとせまるまるでエイリアンのような気持ちの悪い口に強引に短剣をねじ込んだ。
どうにでもなれと思いながら体重をかけ剣の柄を押し込む。粘つく泡に血が混じり、赤い飛まつが体にかかる。全身に悪寒が走った。頼むからこれがただの悪夢であって欲しい。
そんな俺の願いとは裏腹に突然、景色が遠のいていく。気がつけば俺はもう一方のハサミにつかまれ宙に浮いていた。万力に締め付けられているかのような痛みが腹部に走る。必死に押さえるがびくともしない。横を見るとシャリンも同じようにもがいていた。
「おい!大丈夫か?」
「まあ、うっくそっなんとか剣を隙間に入れて耐えてはいるが……」
彼女は器用にハサミの根元に短剣を刺し、こらえている。俺は……置いてきてしまった。心配していたが自分のほうが死期が早いかもしれない。
だがこの状況、もしかしてチャンスではないだろうか。いまや尾の先の針もなくなり両手のハサミも防がれている。しかし背に上って攻撃してもそれが効くのかわからない。二人の攻撃をうけてもなお生きているところからそこが弱点ではないのかもしれない。
考えろ、早く考えなくては俺が死んでしまう。今も無防備な腹にハサミのとげが食い込んでいる。では弱点は?まさか口か?そこから頭にかけて刺すのがいいかもしれない。フィリアナの長い剣なら可能だ。でも彼女の背では低い口元に届きにくいだろう。今すばやい攻撃ができるのは……。
「フィリアナ!ニーナに剣を渡せ!それで口の下から頭にかけて貫くんだ。ピ、ピヨ、こいつの頭上を飛んで目線をそらしてくれ」
俺は肺に残っていた空気をすべて搾り出すように叫んだ。