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第254話 星のつながり

コルと同じぐらいの歳の子が一人でいるのを見つけた

「ねえ、あの子一人だけど大丈夫なの?」


 友達と遊んでいたコルは脚を止めこちらを振り返った。


「え、だれ?ああ、エスのこと?エスは変なんだ、だからみんな話しかけないの」


 どうやらあの少年はエスという名前らしい。大人しそうだが特に変な感じはしない。すると隣にいた女の子がクスクスと笑った。


「エスはだれのことも好きじゃないんだって。変なのー」


 二人は笑い合ってまた元気に走り出した。だれのことも好きじゃない?いまいちよくわからない。夜になりみんなが休み始めたころになっても彼は一人のままだった。近くに家族らしき人はいるが、なぜか距離をおいている。まるで彼の存在自体、だれも見えていないようだ。


 俺はやっぱり気になってヴィーとコルのもとへこっそり行ってみた。


「あの、なんであの子離れているのかな?危ないと思うんだけど」

「だからエスはだれも好きになれないの。こないだどの女の子が好き?っていう話になったけどやっぱりどの子も好きじゃないって」


 どの世界に行っても恋バナか……。


「ちなみにコルはどの子が好きなんだ?」


 俺の問いかけに彼は二人指差した。二人も好きなんて、これは恋というより単に気に入っているという気持ちに近い。


「ねえ、お母さんも変て思うでしょ。だれも好きになれないなんて、そうしたら一生一人ぼっちだよ」


 なんとなく心臓が痛い。そんな無邪気な子供の一言に星空を見上げていたヴィーがゆっくりと口を開いた。


「うーんそうね、母さんは別に変だと思わないけど」

「え、なんでだってお母さんもお父さんのこと好きになったでしょ?」


 どちらかというと逆な気がするが。母親は怒る様子もなく淡々と質問に答えていく。


「そう、だけどねそうでもないのよ。私たちはこの地上に落ちてくる前、楽園では完璧な姿でいたの。でも落ちてくる途中で男と女に分裂してしまった。だから私たちは元の姿に戻るため、相方をさがしてるの。男男、男女、女女、もともとはそんな形だった」

「えーそうなの、じゃあ今お母さんは完璧ってこと?でもそれじゃひとりぼっちはずっと不完全てこと?」


 目を大きくして見つめる子供にヴィーは言葉を続ける。


「ひとりぼっちの人はね、もうそれで完璧なの。でもそれは自分ではわからない。完璧だと思っていてもあるときそうじゃなかったとわかる日が来るかもしれない」

「そっかーじゃあエスはひとりぼっちでもいいんだ」


 俺も一人で完璧かもしれない……。すると彼女は星を指差した。


「明るい星はひとつでもきれい。だけど点と点を結び合わせて星座をつくればそこに形ができて物語が生まれる。それが人とのつながり」


 なんだかとてもロマンチックだ。それに対してコルは首をひねり少し考えた。


「じゃあ僕がつながったら星座になるの?」

「それはわからない、でもやってみる価値はあるかもよ」


 すると彼はおもちゃを持ってエスのところへ歩いていった。しばらくどうなるか遠くから見ていたが彼らは喧嘩することなく静かにボードゲームを遊び始めた。

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