第252話 感動の再会
少し姿の違うこのケンタウロスたちは古代種だということがわかった
ほかの仲間たちがキャンプを設置し始めたところでようやく後ろから荷車を引いていた男が到着した。
「あっすいませんどうもありがとう」
俺が声をかけると男は荷車をはずしわざとらしく汗をぬぐった。
「はあ、一体なんだって言うんだ、なぜ俺が荷物を引いていかなきゃならねえ。あいつの子供のことなんだからあいつがどうにかすりゃいいのによ。なんで俺まで……」
ぶつくさと文句を言っていたが先頭にいたコルの父親がこちらを振り返った瞬間、静かになった。そして近づいてくる様子を見ておびえだした。
「あっやべ今の聞こえたかな、あいつ機嫌悪いとすぐ殴るんだ」
「やっと到着したか、あいかわらずのろまだなお前。おい!あんまりヴィーに近寄るんじゃねぇ!」
突然怒鳴りだしたので俺と隣の男はそろって肩を震わせた。ヴィーとはきっと奥さんのことだろう。俺が先ほど隣を歩いて話をしていたのが気に入らないのだ。
父親はこちらをにらみながら再び先頭へと戻っていった。彼が去った後、隣の男はまたも文句を言いながらどこかへ行ってしまった。
「ごめんなさいね、うちの主人いつもああなんです。でも根はいい人なのよ、まあだいぶ乱暴ですけど」
コルの母親、ヴィーが申し訳なさそうに話しかけてきた。
「いえ、でも大変ですね。あのこういう言い方は失礼かもしれませんが、殴られたりとか……はないですか?」
「ふふふ、ないですよ、私にだけだけど。私には優しいの、というかすごく甘えん坊、どうしようもない人。ちょっとめんどくさいんですけどね」
彼女はおやすみなさい、と挨拶するとコルと一緒に歩いていった。
次の日俺たちは朝早く、まだ日が昇りきる前から出発した。もちろん昨日に引き続き荷車は後ろの男が引いてくれている。
なにもない広い砂漠をコルの父を先頭にただ進んでゆく。どこに向かっているのかわかっているのだろうか。どこを見渡しても砂の海、何の動物の姿も見えない。日を遮るものがまったくないので日中は本当に地獄だ。奴隷商人がコルを捕まえるのに数ヶ月もかかった意味がよくわかる。
しばらくすると遠くのほうから別の集団が歩いてきた。弓を肩からかけた女を先頭に大勢のケンタウロスたちの姿が見える。数が少ないと思っていたが別行動をしていたようだ。
先頭の女はコルの父に手を軽く上げて挨拶をした。コルも早速友達と合流し、楽しそうに遊び始める。
「あの人が先に行ってしまったので二手にわかれることにしました。全員で行くのは危険すぎるから」
そう言ってヴィーは安心したように微笑んだ。仲間たちはコルをかこんでよかったな、と口々に彼の無事を喜んでいる。群れはまた一つになり、にぎやかになりながら進み始めた。