第249話 乱暴な再会 1
少年の父親に出会えたが、思わぬ人柄だった
町を抜けると遠くのほうにローレンたちの姿が見えた。どうやら先に脱出できたようだ。だが護衛たちも俺たちを逃すまいと後ろから馬に乗って追ってきた。
せめて少年と父親を合わせなくてはならない。先に行って合流してもらおう、そう思ったとき先頭を走っていた彼が急にUターンしてきた。俺とニーナの間を割って後ろの護衛たちにそのままのスピードで突っ込んでいく。そしてすれ違いざまに首元につかみかかると無理やり馬から引きずり下ろし、地面へとたたきつけた。
「ちょっ、もうあんたが行っちゃだめじゃない!」
ニーナの声がけもむなしく彼は再び一人で騎馬隊へ突撃していった。それと同時に遅れて空の上からピヨが現れた。上空で旋回すると護衛の一人に突撃し、爆発を食らわせる。死角からの攻撃に相手は慌てている。
「へえ、あの子も結構やるようになったのね」
横でニーナが満足そうににやりと笑った。だが後ろのほうで数名が弓を構えている。これはまずい、ピヨとは相性が悪い敵だ。矢の先は暴れる父親に向けられている。
「あの!う、後ろ、危ないですよー!」
大声で叫ぶもやはり聞いてはいない。すると突然砂を巻き上げ火柱がいくつか上がった。これはピヨの技ではない、エレナーゼだ。彼女は茶色の布を体にまとい、砂漠にできた砂の凹凸に身を隠すように横から援護してくれている。
敵が混乱している今がチャンスだ。
「悪いフィリアナ、彼を連れ戻してくれないか?俺じゃ巻き込まれちゃう」
フィリアナはうなずくといまだ喧嘩に精を出している父親の元へ向かっていった。本当は自分で行けばいいのだがどうしても俺では背が足りない。きっと気づかれぬうちにあの斧にぶつかってしまうだろう。フィリアナは一言、二言声をかけていたが最後には彼の腕をつかんで引っ張ってきた。
「さあ行きましょう、エレナーゼさんピヨちゃん退却します!」
隣でニーナがやっとか、とつぶやいた。それからは後ろを振り返らずに全速力で走った。時折、ヴェロニカが追っ手をけん制してくれていたようだ。
なんとか他のみんなと合流することができた。俺たちが近づくと少年がうれしそうに駆け寄ってきた。
「お父さん!お父さん!」
嬉しそうに周りを駆け回っている自分の子をよそに彼はこちらをじろりとにらんだ。
「……お前たちはなんだ、化け物の集まりか」
「お父さん、この人たちが助けてくれたんだよ」
相変わらずこの人はいったい何なんだ。まあとりあえず少年が家族と再会できたようでよかった。親子の感動の再会は見られなかったが。
「ちょっとあんた人のことを化け物呼ばわりは失礼なんじゃない?」
そんな彼をニーナがにらみ返す。状況が飲み込めずポリーンは困惑した表情だ。それはそうだ、彼女もきっと感動的になると予想していたのだろう。
「フン、俺は別に助けて欲しいなど一言も言っていない」
そう言うと彼は自分の子供すら置いて先に走り出してしまった。