第246話 性急な救出作戦 3
自分も奴隷を連れていると偽り、テントへ侵入することに成功した
「あ、ああご苦労様」
今のは一体どういう意味なのだろう?うまくいったのか?シャリンに目配せをしてみたがいまいち反応がない。
「蛇だ!蛇がいます!」
突然シャリンが男の足元を指差し叫んだ。男は大慌てで椅子から立ち上がる。え、なぜ言ってしまったんだこれでは作戦どおりではない。まさかシャリンが忘れたなど、そんなことありえるのだろうか。
「どこだ?うわ、あっちいけ!」
男は足元の蛇にパニックになっている。
「下がってくださいそれは毒を持っています」
シャリンが男をかばうように前に立ち、短剣を蛇の頭に突き立てた。何度も剣先を叩きつける。もともと死体だった蛇はぴくりとも動かなくなった。
「さあこれでもう大丈夫です」
「はあ、今日は災難が続くな。お客様の奴隷に助けてもらってしまいましたね」
男は額の汗をぬぐい再び椅子に腰掛けた。それを見てシャリンがこちらを振り返える。
「それと報告があります、奴隷の一人が旦那様に話があるようです。一度外へ出てください」
話とは、もしかして作戦が失敗したとローレンが言っているのか?男に一言謝ってテントから出た。
「なあさっきのはどういうこと……」
「鍵は手に入った行くぞ」
俺が言い終わらないうちにシャリンは走り出してしまった。途中暗闇の中から鍵を手にしたローレンが現れた。聞きたいことはあるが今は少年を助けるのが先だ。幸運なことに檻の入っている馬車の周辺には人がいない。だが当然ながら扉には鍵がかかっている。
沢山ついている鍵を一つ一つはめ込んでいく。焦っているせいかなかなかうまく行かない。
「ね、ねえ早くしないと、だ、だれかきそうよ」
「わかってるけど……よし開いた」
そこには檻の端で怯えているケンタウロスの少年がいた。
「ちょっと待ってろ今出してあげるから」
シャリンにも手伝ってもらい檻の鍵もなんとか開けることができた。しかし少年は怖がって出てこようとしない。
「ほら早く、大丈夫だから。君の家族も助けに来てる、一人だけど」
家族という言葉に少年の顔が明るくなる。
「え?本当に?きっと父さんだ」
彼はうれしそうに檻から出てきた。あとはその肝心の父さんを探すだけだが……。
「お前たちそこでなにしてんだ!」
当然ながら見つかってしまった。それはそうだ一番大切なものから長い間、目をはなしているわけがない。俺は少年の手を引き全力で走った。