第243話 無意味な道
町で奴隷商人からケンタウロスの少年についての情報を得た
「えーっといや別に…」
「別になに?ローレンあんたまたなにかやろうとしてるの?」
ニーナに詰め寄られローレンは身を引いた。
「い、いや違うのよ、いや違くはないけど、え、えと」
「どうかしましたか?まだ足りないものがあります?」
そこへフィリアナまで来てしまった。ピヨとポリーンも手を止めこちらを見ている。
「そ、そんなに注目されたら、え、あ、捕まってる人がいるって話……。助けなくていいのかなーって」
そう言って彼女は俺を見た。視線が一気に俺に移る。
「そのーそう、捕まっている人がいてだな。なんとかできないかなーって」
歯切れの悪い俺に隣のシャリンがため息をつく。
「みんな聞いてくれ、町にケンタウロスの少年が捕まっているんだ。そこでだ、私たちはなんとかして彼を助けだせないかと考えている。どうやら親はこの近くにいるようなんだ。捕まったのはつい二、三日前らしい」
「あーそういうこと。いやでも結構大変そうだし、危険そうだからやめたほうがいいかもしれないと思うんだ」
ニーナはハァーとわざとらしく息を漏らした。
「なるほど、あのさ、さっさと言いなさいよ。私あんたのそういうところイラつくのよね」
「今回ばかりはニーナさんの言うことに賛成です。ヒロさん、あなたも仲間の一人なのですよ。それともわたくしたちはそんなに頼りになりませんか?」
そういうわけではないが、今回は以前のように必要なわけでもなくむしろ危険にさらされるだけだ。セシリアの言うとおり無駄な道草だ。
だが無駄だっていいんじゃないか?今までなんだかんだ理由をつけて逃げていた、危ないから、無意味だから、面倒だから。人生でたった一度ぐらい自分の意思で、冒険をしてみてもいいかもしれない。
「そうだな、よし、俺は捕まっている少年を助け出したい。みんなに力を借りてもいいか?もちろん強制はしないだけど……」
「ふふもちろんですよ、さあ作戦を考えましょう」
俺の言葉をさえぎるようにフィリアナははりきってみんなを集めだした。逃げようとするカルベネを捕まえ早速話し合いを始めている。
後ろでセシリアのうんざりと言うような吐息が聞こえた気がした。