第242話 砂漠の奴隷商人 4
ローレンとシャリンに促され、奴隷商人と話をしてみることにした
俺たちは広場から離れた裏手に建ててあるいつくかのテントのうちの一つに案内された。何台もの馬車が止まっている。きっと移動しながらこうして商売をしているのだろう。
中は雑然としており、そこかしこに物が散らばっている。
「すいません散らかってて、さあ、そこにおかけになってください」
男が引いた小さなテーブルのいすに腰掛けた。
「それで彼について教えてくれますか?俺はあんなもの今まで見たことがない。正直驚きましたよ」
俺が驚いた様子を見て男は満足そうに笑った。
「そうでしょう、そうでしょう!そりゃ随分と大変でしたからね。なにせ二ヶ月以上、この広大な砂漠を探し回りやっと見つけたのですから。そこからさらうタイミングを計ってようやく手中に収めました」
広大な砂漠を探した、ということは彼はもともとここら辺に住んでいるということになる。それに家族もだ。そうなったらきっとまだ近くにいるかもしれない。
「へぇそれは大変でしたね。いつごろ捕まえたのですか?一週間前?」
「いやいやつい二、三日前ですよ」
それならなおさらだ。きっと家族が来る前にさっさと売ってしまう作戦なのだろう。
「もしよければ近くで見てみてもいいですか?」
「ええもちろん、さあこちらです」
男は俺たちを馬車の一つに案内した。段を上がりそこの鍵を開けるとさぁ、と手招きした。
暗がりの中少年は檻の端で小さくなっていた。俺の姿を見るとおびえたように毛布を握り締めた。檻にも当然鍵がかけられている。
「すばらしいですね、でも彼はずっと檻の中でああしているのですか?」
「外へ出してみようとしても動かなくてね」
そう言って男は肩をすくめ、手にしている鍵の輪をジャラジャラと鳴らしながら扉を閉めた。きっとあの鍵のうちの一つだ。男は鍵の束をポケットにしまうと再び歩き出した。
「どうですか?お気に召しましたか?」
「ああ、とてもよかったですよ。さすがですね、少し考えさせてもらっていいですか。新しい奴隷を受け入れるスペースがあるか見てきますね」
俺はさらっと礼を言ってその場を立ち去った。
キャンプへ戻るとすでにみんなは支度を始めていた。
「ちょっとあんた帰ってくるのが遅いじゃない、朝ごはん食たべちゃったわよ」
「あはは、ごめんついつい目移りしちゃって」
適当にニーナを受け流すしているとローレンがスッと回りこんできた。
「で、どうだった?な、なにか情報、あるんでしょ?」
俺はあった出来事を彼女に伝えた。
「なるほど、そ、それでその鍵は今男のポケットの中っていうことね。そ、そうねぇ、これなら親を探すほうが早いかもしれない。もしかしたらここらをまだうろついているかも?」
彼女の言うことが最善かもしれない。でも親を見つけたからといって無事逃げ切れるだろうか?
「あんたたちなにこそこそやってんの?あたしには言えないこと?」
俺とローレンの間を割ってニーナが文字通り首を突っ込んできた。