第241話 砂漠の奴隷商人 3
気持ちに葛藤が生まれた亜李須川
なぜか夜中にローレンが起きている。
「えっと、もしかして聞いてた?」
「き、きいちゃった……しょうがないじゃない!で、なにで悩んでるの?私には言えないわけ?と、友達なのに?」
そう言われてしまえば言うしかない。俺は今日見てきたことを話した。
「あ、なるほど、それはひどい話ね。かわいそうに、きっと珍しい種族に違いないわ。でも情報が少なすぎる。そうだあなた明日、町に言って調べてきたらどう?」
もう一度行く予定ではあったが、ここで行動を起こして果たして大丈夫なのだろうか?下手な動きをして俺たちのことがばれてしまっては面倒だ。こちらにはスフィンクスのエレナーゼがいる。見つかったらさらわれてしまうかもしれない。
とりあえずそうすると返事をして再び眠りについた。
翌朝、俺とシャリンで町へと向かった。朝は朝でまた別のにぎわいがある。旅行客より地元民が多い感じだ。そういえばピヨに土産を買っていくのを忘れた。
市場を物色していると見たことのある木彫りの人形が売っていた。池で休んでいたときに出会った二足歩行の小さな恐竜だ。
「これなんていう動物なんですか?」
「あ、これかい?こいつはミクロランナー、ここいらではよく見かけるよ。足が速いから捕まえるのは難しいけどね、トカゲのような見た目だけどニワトリの仲間らしいね」
店員はこころよく答えてくれた。俺は結構かわいいと思ったが果たしてピヨが好きかはわからない。とりあえず水を入れて遊ぶ鳥の形をした笛を買って帰ることにした。
帰り道、再びあの広場に出た。昨日とは違い人はまばらだったが、あの小太りな男がだれかと話している姿が見えた。
「行ってこなくていいのか?」
シャリンが何かを察したのか俺の方をじっと見つめてきた。本当は通り過ぎたいところだがこれではローレンにしめしがつかない。俺はだめもとで男に近寄った。
「ああ、お客様、おはようございます」
男は金歯を見せてにっこりと笑った。一緒に話していた別の男もこちらを振り返った。
「すいませんお話中だったのに」
「いや、君も買いに来たのかい?私の娘が昨日の金魚を気に入ってね、一匹もらおうと思って」
どうやら別の客のようだ。さわやかで余裕のある笑みを浮かべている。
「そうでしたか、俺はずっと旅をしているんですけど昨日の、その、ケンタウロスが気になりまして」
俺の言葉に奴隷商人は目を輝かせた。
「左様ですか!お目が高い、もしかしてですがお客様めずらしいペットがお好きですか?」
商人は身を乗り出し俺の後ろ、シャリンに視線を向けた。いい気分ではないがこれはチャンスだ。
「ああ、実はそうなんです。俺は各地で気に入ったのを仲間にしていて。彼女は雑用係といったところかな。それで教えてくれますか?」
男はもちろんですといった後、別の客をアシスタントに任せ俺を自分のテントに招いた。