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第240話 砂漠の奴隷商人 2

町でケンタウロスの少年が捕まっているのを見てしまった

 二度目の買出しが終わった頃にはもう日が沈み始めていた。


「あっおかえりなさい結構かかりましたね」

「いろいろ見てて遅くなっちゃった」


 俺は笑顔で出迎えてくれたフィリアナに何事もなかったかのように返事をした。


「でもこれでそろいましたね。お疲れ様でした、わたくしも手伝いに行けばよかったですね」

「いや大丈夫、混んでいたから俺たちだけで十分だったよ」


 彼女は荷物を受け取ると夕飯の支度を始めた。シャリンがこちらを心配そうに見つめている。


「いいのか?言わなくて」

「だって言ったところでなにもできないだろ?だったら知らないほうがいいんじゃないかなと思って」

「まあそれもそうだな……」


 俺は焚き火のそばに腰を下ろし水を飲んだ。燃料も十分で温かい。みんなで夕食を食べてから休むことにした。明日、もう一度市場へ行きそれから出発しよう。俺は重たくなるまぶたに従いそのまま目を閉じた。


 ……なんだか寒い。寝袋を肩まで上げたがまだ寒い。薄目を開けると焚き火の火が弱まっている。ヴェロニカが焚き木をくべてくれていないのか。仕方が無いので寝袋から這い出て木を放り投げ、息を吹きかけた。


 乾いた音を立て再び火が勢いを取り戻す。揺れる炎を見つつ俺はふとケンタウロスの少年のことを思い出した。彼は今頃檻の中で寒い思いをしているのだろうか。親はきっと心配しているだろう、突然目の前から姿を消した息子のことを。今も探しているかもしれない、それかもういないのか。


 なんとなく自然とため息が口から漏れる。まさかこんな砂漠のど真ん中にいるなんて想像もしないだろうな。全く別の世界へ行ってしまったなんて、もう死んでいると思われているかもしれない。


「よお小僧、なんで起きてんだよ」

「あっヴェロニカ、いや寒くて」


 そいつは悪かったなと言い彼女は荷車に腰掛けた。


「あのさ、どうでもいい話なんだけど今朝町に行ってさ、そこで捕まっているケンタウロスの子供がいたんだよね。なんか忘れられなくて、すごい綺麗な毛皮をしていたんだ」

「ふーんで?お前はそれを助けたいのか?」

「い、いやかわいそうだなと思ってさ。だってまだ子供なんだ、親だって心配している」


 わかっている、俺はフィリアナのせいにしているだけで本当は助けに行きたいという気持ちをごまかしている。だが現実どうにもならない。俺はなにもできないのだ、この世界に来てそう思った。圧倒的に弱いのだ。立場としてはメロン農家のイモンたちと同じ、助けられる側の人間だ。


 思い返せば今までずっとみんなに助けられてきた。ここでわがままを言う訳にはいかない。


「いや、とはなんだ?私は助けたいかと聞いたんだ、どういう答えだそれは」

「俺には無理っていうことだよ。みんなにこれ以上迷惑かけたくないから」


 俺は彼女に背を向けて寝床に戻った。


「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ、な、なんで相談もしないで決め付けるのよ」


 突然目の前に現れたローレンに思わずぶつかりそうになった。

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