第237話 人間と人外
砂漠に入ったところでオオカミウマに出会った
砂漠に入るとさらに朝と夜の気温差は増してきた。地獄のような暑さから一転、日が落ち始めると分厚い毛布が欲しくなるくらい寒くなる。俺たちは今度は体を震わせながらひたすら歩き続けることとなった。
そろそろ休みたいのだが辺り一面砂だらけで休憩できそうな場所が見当たらないのだ。荷車に乗っていたヴェロニカが目を覚まし始めた。
「なんだまだ砂漠にいんのかよ。暑くなったり寒くなったりとんでもねえな」
仕方がないので俺たちは砂漠のど真ん中でキャンプをすることにした。焚き火のための木すら落ちていないため、節約して使わなくてはならない。
一日中荷車を引いていた疲れかフィリアナはぐったりとしている。ピヨとポリーンも話す気力がないほど疲れてしまっている。俺は火の近くに腰をおろし残り少ない水を口に含んだ。
虫の音ひとつ聞こえない、不気味なくらい静かだ。こんな場所でオオカミウマたちはどのように暮らしているのだろうか。次の町に行ってもどうせ入れるのは俺とシャリン、カルベネ、セシリアそれからフィリアナぐらいだ。なぜみんなで入ることができないんだろうか。いちいち外で待ってもらわなくてはならないし、なにも悪いことをしていなのにまるで罪人のようにこそこそと隠れなくてはならない。
なんだか無性に腹が立ってきた。俺は思い切ってこの理由をみんなに聞いてみることにした。
「あのさ、なんで人間が支配している町にシャリンとカルベネは入れるのにニーナとピヨは入れないんだ。獣人はいるのにハーピーはだめなのか?どちらかと言ったら獣人のほうが動物みたいだけど」
俺の質問にフィリアナはうーんと首をかしげた。
「そうですね、人間がモンスターと呼ぶその線引きみたいなものってよくわかりませんよね。わたくしも外へ出て驚きました。だって自分は違うと思っていましたからね」
そういえば初めの町、ゲルボルク領ではフィリアナは普通に暮らしていたのだ。だが新しく建設された町では厄介者として駆除対象にされていた。
「あんたならわかるんじゃない?だってあたしたちと初めて会ったとき、野蛮な種族だって言ってたものね、あたしのこと」
「うっニーナさんやめてくださいよ。それは申し訳ないと思っていますから」
黒歴史を掘り返されフィリアナは恥ずかしそうにしている。
「それは置いといて、自分の勝手な見解なんだけど人間に比べてあたしたちが強いからじゃないかな。ハーピーだってあのハンターハーピー、だっけ?あいつらが来たらひとたまりもないじゃない?」
なるほどそれは一理ある。ナーガと人間を比べれば力の差は歴然だ。パワーもスピードも持って産まれたものが違う。
「あたしたちが会ってきた種族はいい人ばっかりだったけど、中には自分より弱い人を襲って盗みや殺人をするやつらだっていると思うの。だから冒険者が生まれたんじゃないかな?」
「そうか、そうしているうちに人間は数と武装で戦うようになったんだな。そのなかで獣人は人間側につくようになったんだろうな」
そう考えれば残念だが納得せざる終えない。どちら側にも言い分があるのだろう。仕方がないがこの先も人一倍大変な旅が続きそうだ。