第234話 小さな走り屋
灼熱の中、ピヨが遠くに水辺を発見した
日が沈みかかった頃、何とかピヨが見つけてくれた水辺までたどり着くことができた。残念ながら水は濁っており飲めそうに無い。でも入って涼むぐらいはできるだろう。俺は早速靴を脱いでスボンをまくり足をつけた。……ぬるい、まるで足湯のようだ。
まあ仕方が無い、とりあえず今日はここで野宿をして明日再び町を目指して歩こう。俺たちは荷物を降ろしてわずかな木陰の下でキャンプをすることにした。
水辺のそばに腰を下ろしふと横を見ると盛り上がった地面に穴が開いている。イタチかなにかの巣穴だろうか?夕食を食べながらしばらく見つめていると入り口からひょこっとトカゲの頭が出てきた。小さな頭につぶらな黒い瞳をしており、舌を蛇のように出し入れしながら周囲の様子をうかがっている。
しばらくして安全だと思ったのか中から小さな恐竜に似た二足歩行の爬虫類が出てきた。それに続き次から次へと仲間が巣穴から出てくる。ざっと十匹はいる。交互に頭を上げては地面のえさを探したり、水を飲んだりしている。
これはもしかして以前フィリアナの背に乗ってキンナラの集落へ向かう途中で見た動物ではないだろうか。あのときは遠すぎてよくわからなかったがかわいらしい外見をしている。
「なあ、フィリアナこれってさ……」
思わず声を出してしまった。小さい恐竜たちは俺のほうを一斉に見た後、ものすごい勢いで巣穴に入っていった。
「どうかしましたか?」
「いや、今ここにいたんだけど、俺が驚かせたから逃げちゃった」
ピヨはあっ!と言って巣穴の中をのぞき始めた。
「中に何かいる!」
「おいかわいそうだろ、噛み付かれるかもしれないぞ」
それでも彼女は巣穴に翼を入れて触ろうとしている。視線を上げると別の巣穴からぞくぞくと逃げ出しているのが見えた。
「あれいなくなっちゃった」
それはそうだ彼らはいくつも逃げ道を用意していたのだから。次の町に行ったら名前を聞いてみてもいいかもしれない。
日が落ちると以前にも増して肌寒くなってくる。俺は今までの寝具に無理やり毛布などを足し、縮こまって目を閉じた。