第231話 賞賛の踊り
ピヨに助けられグリフォンを撃退することに成功した
次の日俺たちはイモンとその家族に別れを告げた。
「もう行くのかい?まあそうだよね、君たちは旅人なんだもの。どうもありがとう、いろいろ助かったよ」
「いやこちらこそ泊めてくれてありがとうな」
俺は彼と握手を交わした。
「それとニーナ、君には僕から個人的にお礼を言わなきゃね。君のおかげで僕も少し勇気を出せたんだ」
礼を言われニーナは照れくさそうにしている。
「あたしなにもしてないけど、まあ、でもこの先ここに住むのはあんたたちだから。あたしたちが解決したってそれは一時的なものでしょ、次に同じことが起っても自分たちでどうにかして欲しいと思っただけ」
「そうだね、これからは僕がこの農家を守っていくよ。あ、でもやっぱり戦うのは苦手かな」
そう言って彼は陽気に笑った。
「ここから先に行ったところに大きな町があるよ。でもこの先は砂漠地帯になっていてここよりもっと苛酷な環境だから気をつけてね」
薄々気づいてはいたがやはりこの先は進むのがより大変になりそうだ。俺は彼から砂の上でも荷車を引けるよう木のそりを受け取った。車輪をはずしこの上に乗せて使うようだ。
メロン農家に別れを告げしばらく歩いたところでデザードスケイル族に出会った。彼らも俺たちにお別れを言いにきてくれたのだろう。
「手伝ってくれてありがとうな」
声をかけると族長が俺になにか木彫りのメダルのようなものをくれた。意味はわからないが彼らの友好の証なのかもしれない。すると突然後ろにいたトカゲたちが楽器を演奏し始め、皆一斉にあのヘンテコな踊りを始めた。これに俺の仲間たちは身を引いて驚いている。
「え、なにこのよくわからない踊り、すごくバラバラなんだけど」
「これが彼らなりのお礼なのでしょうか?」
後ろからニーナとフィリアナの困惑する声が聞こえてくる。さすがにいつもノリの良いピヨもどうしてよいかわからず目を細めている。そして踊りは突然ぴたりと終わり、彼らはそそくさと帰っていった。きっと水が戻った喜びを表現してくれたのだろう。
踊りを見終わった後、俺たちは再びだだっ広い荒野をひたすら歩くこととなった。しばらく進み日が落ちてきて肌寒くなってきたので今日はここで野宿をすることにした。
この先また次の町にたどり着くまで長そうだ。きっと二、三日いやもっとかかるかもしれない。そんなことを考えながら寝る用意をしているとなにやら楽しそうな声が聞こえてきた。