第230話 空飛ぶ獅子、グリフォン 4
空へ放り出されたが盗賊団の男に間一髪で救われた
くちばしの先がピヨに届きそうになったとき幸運にも下から風が吹いたのか、彼女の体はふわりと上昇し位置を変えた。そのままそこへピヨが一撃、爆発を食らわせる。
不意をつかれたグリフォンはしきりに頭を振り、よろけながら帰っていった。その後俺は盗賊団の男と地面を転がった。だが幸いにも彼のおかげでかすり傷程度で済んだみたいだ。
「ヒロ大丈夫?グリフォに食べられてない?」
砂まみれになり転がっている俺の顔をピヨが心配そうに覗き込んだ。
「だ、だいじょうぶだ、それより俺のことを見つけてくれてありがとうな」
遠くのほうから仲間が駆け寄ってくるのが見える。イモンは俺の姿を確認すると安心したように笑った。
「いやー驚いたね、まさかグリフォンがここに来るなんて。もとからいるのは知ってたけど彼らは基本的に上空を飛んでいてめったにここまで降りてくることはないんだ」
「巣に子供がいた、俺たちは危うくえさにされるところだったよ」
彼はなるほど、と相槌を打った。そういえば盗賊団の男はどうしたのだろう。周囲を見渡すと他の盗賊たちに介抱されていた。おあいこのような気もするが一応お礼は言っておこう。
「団長のおかげで助かったよ、ありがとう。翼大丈夫か?」
「ハッ、お前に心配などされたくない。だが助けてもらった恩はある、約束どおり水門を開けてここを去ろう」
後ろでイモンがやったーと手を叩いている。しかし彼らはどこへ行くのだろう、また同じように盗みを繰り返すのだろうか?俺はふと彼が持っていた荷物について思い出した。
「あっちょっと待ってくれ、その、これからなんだけどリサイクル屋として生きてみたらどうかな?かばんの中にあったナイフ、あれも拾い物だよね。拾ってもう一度使えるようにして売ればさ経済的なんじゃない?」
去ろうとしていた男ははぁ?とこちらを振り返った。
「リサイクルとはなんだ?まあいい、そうだなお前の言っているそのリサイクル屋というのをやってみよう」
ついこの世界にはなさそうな言葉を使ってしまったが、意味は通じたようだ。盗賊団が去ってからしばらくして枯れた水路に再び水が戻った。イモンと彼の家族は飛び跳ねて喜んでいる。
俺たちも早速ひさびさの水を腹いっぱいに飲んだ。
「ようやく旅が続けられそうですね、ヒロさんも無事に戻ってきたしよかったです」
「本当よ、全く空に飛んでいったときはどうしようかと思った」
フィリアナの隣でニーナが笑顔を浮かべている。戻ってこれたのはよかったが、もうジェットコースターには乗れなくなったような気がする。