第229話 空飛ぶ獅子、グリフォン 3
グリフォンに掴まり巣から脱出した二人
地面へと激突しまいとグリフォンは身をよじりながら羽ばたく。次第に頭が冷えてきたのか再び高度を上げ始めた。しまった、このままでは巣に戻られてしまう。
「縄を切れ!縄を切って俺につかまれ!」
後ろのほうから盗賊団の男の声が聞こえる。今ここで命綱を切るというのか?それで掴まると?果たして信用してよいのだろうか?だが今は考えている余裕はなさそうだ。
俺は短剣で縄を切り、男へと手を伸ばした。そのときグリフォンが首を左右に振った。足で首を挟み、姿勢を保っていたのに。
「あっちょっとまずい、落ちてしまっ……!」
次の瞬間俺の足はするりと首を離れ空中へと投げ出されてしまった。すぐにグリフォンの姿が遠ざかる。
死んだ、完全に終わった。冷や汗すら風で飛ばされ空が小さくなってゆく。もう後ろを見たくない、どうせあるのは地面なのだ。できれば痛み無く死にたい、命の危機はたびたび訪れたがどうやら次はないようだ。
目がくらむような強い日差しの中何かがこちらに向かってきている。
「手を伸ばせ!俺につかまれ、なにをやっている!」
手を当てて光を遮ると盗賊団の男が俺に向かって急降下してきている。だが彼は翼を怪我していたのでは?
そんな考えが頭をよぎる前に俺は無意識に手を前に伸ばしていた。男の服にがむしゃらに掴みかかる。
「胴にしがみついてろ!」
俺は言われるまま腕に力を入れしがみつき歯をくいしばった。このまま地面に激突するだろう、しかし命は助かるかもしれない。
男は翼を広げ必死に羽ばたき始めた。ふと男の体越しに後ろを見るとそこにはこちらに飛んできているグリフォンの姿があった。鳴き声をあげながら逃がすものかといわんばかりにものすごい勢いで来ている。
「う、後ろ、後ろから来てるぞ!」
「なに?ハア、くそっ、追いつかれちまう」
そのとき前方から良く知った声か聞こえてきた。
「どいてーおじさんとヒロどいてー!」
ピヨが俺たちの居場所を見つけてくれたようだ。だがこの状況は最悪だ。
「引き返せ!危ないぞ、グリフォンが来てる!」
俺の忠告が届いていないのか彼女はスピードを緩めることなく向かってくる。このままではピヨと激突してしまう。
「ピヨ!おい、聞こえてるか?!おーい」
もしかして俺を無視しているのか?男は舌打ちをすると体を傾けすれ違った。ピヨが怒ったグリフォンの眼前にまで行ってしまった。
グリフォンは彼女を丸呑みしようと大きなくちばしをガバリと開いた。