第225話 大鷹たちの巣
酒を仕込んだメロンを盗賊に引き渡すことに成功した
「おきて、おきて、トカゲさんたち来たよ!」
ピヨにたたかれ飛び起きた。少し休憩するつもりがぐっすりと眠ってしまっていたようだ。外は日が落ちかけ空は紫色に染まっている。
俺はカルベネとエレナーゼとともに水源へ向かった。遠くから観察したところ外で眠っている人が数名いるだけだ。おそらく他は中にいるのだろう。
「へへへ見張りまで眠るなんて、まぬけだなー」
カルベネが笑いながら大岩の入り口へと近づいていく。そっとのぞいて見ると奥のほうにまるで湖のような大きな水溜りがあり、手前の地面や洞窟内の岩の上で皆ぐっすりと眠りこけている。
俺は近くに転がっている鞄を見て回った。するとその一つに盗まれたであろうデザードスケイル族の卵が入っていた。見た目は蛇の卵のような楕円形で手のひらより大きい。親から離れていたがまだ無事だろうか。とりあえずそれを肩からかけた。
「よし、起きる前に逃げよう。ってお前なにやってるんだよ!」
なんとカルベネが一緒に寝ていた盗賊団の子供を担いでいる。盗賊は悪いが子供まで巻き込むのはよくない。
「なにって人質よ、だって兄さん卵を取り返したって結局なんの解決にもなってないよ」
彼女の言うことはもっともだが今度はこちらが悪者のようだ。
「いかに悪人でも自分の子供は取り返しに来るだろ?大丈夫、きちんと返すさちょっとした脅しよ」
「まあ、それなら。だけど持っていくのはその二人だけだからな」
俺たちはすぐにその場から撤退し、農家へと戻った。こちらの姿を見たニーナが寄ってきた。
「どうだった?うまく行った?え、なにその子供はもしかしてさらって来たの?」
眉間に皺を寄せるニーナに人質だと説明した。
「ふーん、まあカルベネの考えそうなことね。とは言ってもそれぐらいしか手はなさそうだけど」
口々に仕方ないと言う仲間にイモンは大慌てだ。
「うわーどうしよう、絶対怒ってくるよ、いつ来るかな?ああ、どうしよう避難しなきゃ」
そんな彼にニーナはため息をついている。酔いが醒めたら絶対に来るだろう。だがこちらも引き下がるわけにはいかない、ここまでやったのだから水はなんとしても取り返さなくては。
ばたばたと忙しそうにするイモンを背後に俺たちは農家の入り口で待つことにした。夜が明け空が明るく光を取り戻し始める。
ピヨとポリーンは待ちくたびれて眠ってしまった。冷えた空気の中静かに座っているとヴェロニカが隣にやって来て空を指差した。
「ほらハゲタカどもが来たぞ」
顔を上げると澄んだ空の遠くにいくつもの影が見えた。