第224話 毒入りのメロン 2
ついにメロンを持って盗賊段のもとを訪れたイモンたち
出てきたのは以前の男とは違い、少し歳をとっているように見える。盗賊団の男はイモンの姿を確認すると意地悪い笑みを浮かべた。
「あぁ、メロン農家のやつか。なんの用だ?」
「取引をして欲しい、このメロンを渡すから水門を開けてくれないかな?」
男は鉄くずの装飾品をジャラジャラと鳴らしながら彼に近づいていく。それからあごに翼を当て、荷車に詰まれたメロンをじろりと見回した。
「ふむなるほどなぁ、対価を支払う気になったということか」
そう言うと一つ取って調べ始めた。同時に荷車にも視線を送る。彼のことを怪しんでいるようだ。その間イモンは蛇に睨まれた蛙のようにじっと身を硬くしている。
「ん?なんだ一度くりぬかれた跡があるじゃないか?」
「あ、えっと市場に出すときに一度検品するんだ。以前君たちが取って行ったのはまだ検品前だったから。僕たちはいいものしか売らないんだ」
予想通りの質問だ。あらかじめ怪しまれても良いようにいくつか答えを用意しておいたのだ。盗賊の男は口を曲げてはいるが納得したようだ。
「ふーむ、まあいいだろう。よし、荷車を置いていけ、水門をあけてやろう」
イモンが荷車をはずすとメロンは台車ごと洞窟の中へと運ばれていった。彼は取引を終えると足早に戻ってきた。ああーと大きなため息をつく。
「おつかれさまです、一応うまくいきましたね」
「緊張したー心臓が止まってしまうかと思ったよ。疲れたから帰って休みたい」
俺たちは脱力したイモンとともに農家へと戻った。彼は自分の家に着くとすぐに眠りに行ってしまった。
「なによちょっと大げさすぎじゃない?」
「ふふふ、彼なりに頑張ったんですよ」
イラだつニーナを再びフィリアナがなだめつつ、俺たちも夜を待つことにした。それはそうとうまく行っているかどうかどのようにして判断するのだろう。
「なあ俺たち行って見てなきゃだめなんじゃないか?」
「それなら心配いりませんよ、デザードスケイル族の方が見張りについてくれるそうです。なんでも気づかれずに行動するのは得意みたいですね」
それでも不安だが、彼らはかなり頭が良さそうなので大丈夫だろう。とりあえず小屋に戻り暑さをしのぎながら報告を待とう。俺はベッドに横になり目を閉じた。