第221話 楽天家の奇策
煮え切らないイモンの態度にやる気をなくしてしまったニーナ
「ふーん、で行き詰って私の元に来たのか」
俺はわらの上で寝そべっているカルベネに今までのことを話した。彼女は相変わらずのんびりと酒を片手に干し肉を噛んでいる。
「なあ、なにか無いか?頼むよ、なにも思いつかないんだ。ニーナはやる気ないし、デザードスケイル族は話が通じないし、メロン農家は頼りないし」
カルベネはしばらく空を見上げていた。いや見上げているのではない、寝ている。
「おい!起きてくれ!」
「ん、ああ、デザートがなんだって?そろそろ甘いものが食べたくなってきたな……」
だめだ最後の頼み、いやもとからそんなに期待はしていなかったがやはり何も解決策は見出せない。彼女はするりとわらの上から滑り降りた。
「どこにいくんだ?」
「だから甘いものが食べたくなったって言っただろ?」
俺はなんとなしにカルベネについて行ってみた。すると彼女はメロン農家の小屋の一つに窓から忍び込むと、中からメロンを盗み出した。
「だめだろなにやってんだよ、すぐ戻さなきゃ。ただでさえ数が少ないのに」
今の様子が見られていたらと冷や汗をかく俺に対し、カルベネは口笛を吹いて気楽そうだ。彼女はメロンの上を短剣で切り抜くとなんとそこに酒瓶を差し込んだ。
「こうするとおいしいフルーツ酒ができるのよ、知ってた?」
「知ってた?じゃなくてお前それどろぼうだぞ、あーもう俺たちまで盗賊じゃないか」
カルベネはそれを置いて地面に寝そべった。
「これで一日待つ、でも私としては三日待ったほうがいいな。甘くておいしいぞ、食べ過ぎて酔わないように注意だな。なあ兄さん?」
そう言って彼女は俺を見上げた。全くなにを言って……いやこれは使えるかもしれない。武力がないなら戦わなければよいのだ。俺はすぐにイモンのもとへ走った。
彼は少ない水をちょろちょろと畑にまいていた。イモンは俺の姿を見ると力無さげに手を振った。
「やあアリスガワ君、見てのとおりさ。残念だよ、何代も続く農業が破綻するのは。僕が君たちみたいに戦えればよかったのにね、ナーガの女の子に見捨てられるのも当然だね。ニーナだっけ?」
俺はがっくりと肩を落とす彼に作戦を早口で伝えた。
「え?そんなことでうまくいくの?いや、やるしかないよね、だってこのままじゃゆっくり死んでいくだけだもの。わかったみんなに伝えてくるよ」
イモンはすぐに作業を切り上げ、家へと戻っていった。それと同時に俺も仲間のもとに戻り、協力してくれるよう頼んだ。