第220話 干上がった川と暗雲
デザードスケイル族の集落にて歓迎された
俺は一人で帰れると言ったが案内人の二人が扉の前までついて来てくれた。翌朝俺は昨晩の出来事をみんなに伝えた。
「あらそうだったのですか、彼らはなんと言っていましたか?」
「どうやら彼らの卵が盗まれたらしいんだ。だからできるだけ早く取り返してあげたいけど、今度は武力では完全に負けてるしな、どうしようかな」
フィリアナは俺と同じようにうーんと首をひねった。
「そうですね、メロン農家さんたちも町の人たちも戦うのは得意ではなさそうですしね。自警団の方がいると聞きましたがきっと彼らもハーピーとは戦い慣れてなさそうですし」
彼女の言葉にニーナは仕方ないというように肩をすくめた。
「どうしようもないんじゃない?水高いけど買ってそれで行くしかない」
「なんだかニーナさんらしくないですね、いつもなら自分から突撃していく勢いだというのに」
俺もそれについて少し引っかかっていた。いつものニーナらしくないのだ。まあこの暑さのなかやる気が失せてしまうというのもよくわかるが。
「はあ、だってなんだかだるくなっちゃって。いつもあたしたちばかりはりきってちょっと馬鹿みたい」
確かにそう言われてしまえばそうだがそれではこの旅自体、意味を成さなくなってしまう気がする。
よどんだ空気の中、イモンが気まずそうににやって来た。
「あっイモンさんごめんなさいね、今お手伝いしますから」
「いやそうじゃなくて、その、少しだけ流れてた水路の水が枯れちゃって。残るは井戸だけなんだけど、このままじゃ家族の分しかなくてメロンがだめになっちゃう」
腰を低くする彼にニーナは冷たい視線を向ける。
「そう、でもあたしたちもうすぐ出るから。お世話になりました、それじゃ」
そっけなく返事をすると彼女は部屋の中に戻ってしまった。あわててフィリアナが訂正する。
「すいません、彼女ちょっと虫の居所が悪くて。なにか考えますから待っててくださいね」
「あ、あ、ええとどうしよう。今あるもの持って行って水路を開けてもらおうかな」
彼は混乱した様子で戻っていった。このままでは完全に悪循環だ、いずれ資源は尽きる上に何の解決にもなっていない。
仕方がない、こうなったらやりたくはないが奥の手を使うしかない。