第218話 乾いた鱗、デザードスケイル族
出会ったトカゲ人間に水源を取り戻す手助けを求めた
俺たちは青年に何度もお礼を言った。
「いやいや、こんな荒野に女の子を野宿させるわけにはいかないからね。そういえば君たちはコブラクレインを見たかい?水場が取られてしまったせいで姿をめっきり見なくなってしまって」
コブラクレインとは?俺たちは互いに顔を見合せた。
「不思議な鳥さ、蛇みたいな動きをするんだ」
もしかして来るときにピヨが出会った鶴のような鳥のことだろうか?
「えっと、それなら違う水場にいたけど」
「あー本当かい?面白い鳥だよね、僕は好きなんだ」
なんだか能天気な彼にトカゲ人間について聞いてみた。
「ああ、デザードスケイル族のことかな?彼らは変わっているけどいいやつらだよ。僕たちの先祖がここに来る前からいたみたい」
どうやらあのトカゲ人間たちはデザードスケイル族と言い、この土地の先住民のようだ。それから俺たちは泊めてもらうお礼として農家の仕事を手伝った。
水がほとんど供給されないため、井戸や遠くの水場から運ばなくてはならずとても大変だ。こんなことで彼らは納得しているのだろうか?
「こんなに大変なのにこのままで大丈夫なの?」
俺からの質問に青年は困ったように頭に手を当てた。
「うーん、このままじゃだめなのはわかってるんだけどさ」
「じゃあ、あんたたちはなんで何もしないわけ?」
ニーナに睨まれ彼は目線を反らす。
「いやだって戦えないよあんなのとは、どうにかして退いてもらいたいけどこれ以上メロンを盗まれたらたまったものじゃないし」
怒るニーナの気持ちも良くわかるが剣を振るって戦える人のほうが圧倒的に少ないのだ。実際俺も前線に立って戦うことはめったにない。ほとんどの人が戦争が起きていてもそれを画面越しでしか見たことがなく、遠くの安全な場所で終わるのを待つだけだ。
日がすっかり沈んだころようやく仕事を終えることができた。と言っても手入れの行き届かなかった畑が多く残されている。青年の他に一家総出で作業をしているがそれでも手が回らないのだ。
「ありがとう手伝ってくれたおかげで昨日よりはましだね。ところで君たちは何の集まりなのかな?そうだ名前を聞き忘れていたね、僕はイモン」
「俺は亜李須川 弘明、色んなところを回っているうちに次々仲間が増えてさ。特に何の集まりとかじゃないんだ」
俺は長くなりそうな旅の目的を話すのは止めておいた。彼はあまり気にすることなくふーんと相槌を打つ。
「見たことがない種族がいるね、あのクモみたいな人にはちょっと驚いたけど」
ローレンのことだろう、クモが苦手な人にとっては近寄りがたい存在かもしれない。
「彼女はローレン、アラクネ族なんだ。変わってるけどいいやつだよ。失礼かもしれないけどイモンはケンタウロスの仲間?それともサービタウルス?」
「ハハハ、よくサービタウルスと言われるね、僕も似ていると思うよ。鹿みたいだしね。でも僕たちはブケンタウロス、牛の仲間なんだ尾が長いだろ?」
確かに言われてみれば牛のような長い尾がついている。そして牛ケンタウロスのことをブケンタウロスと言うらしい。
「それじゃ僕はもうそろそろ休むよ、君にはお客さんが来ているようだから夜道には気をつけてね。ランタンを忘れずに」
イモンに言われ振り返るとそろには以前出会った二人のデザードスケイル族が立っていた。