第217話 不思議なトカゲ人間 2
不思議な気配の正体はトカゲ人間だった
静かにしてくれと言ったが一番うるさいのは俺かもしれない。まあとにかく今は彼らの目的を探らなくては。
「なあ俺の言葉が本当にかわらないか?おれ、ありすがわ、ひろあき。お前たちは?」
まるで映画で未確認生物に出会った探険家のように自分と相手を指して、ゆっくりと話しかけた。
対してトカゲ人間はチロリと舌をのぞかせただけだった。俺は困り果ててヴェロニカのほうを振り返ったが当然のごとく知らん顔でタバコをふかしている。
するとトカゲ人間の一人が手にしていた槍で地面に何か模様を描き始めた。いや、模様ではない、大きな岩と鳥の絵だ。彼は鳥を槍の先で指すと岩へ線を引き、バツ印をつけた。それから俺を指差し遠くのほうへと指を動かした。
「これは?ええーと、鳥、鳥は……もしかしてあのハーピーの盗賊団か?この岩は水場か?あっ、ここに水がないから俺たちに帰れと言っているのか?!」
よく思い出すとトカゲ人間が指した方角にはキンナラたちの集落がある。彼らは言葉は発しないがもしかしたら知能は高いのかもしれない。俺は短剣の先で地面にトカゲの絵を付け足した。それから岩に線を引いてみた。
顔をあげると二人は戸惑ったように見合わせている。彼らも迷っているのだろう、ここに留まるべきか移動するべきか。彼らの力を借りて問題を解決できないだろうか。
「そうか、ならこれならどうだ?俺たちとお前たちで一緒に盗賊団と戦うんだ」
俺は再び絵を描いて見せた。二人は首を伸ばし地面を見つめた後、こちらを指差した。
「そう俺たちね、水を取り返すんだ。どうだ?手伝ってくれるか?」
言葉が通じたのかどうかわからないが、二人は興奮した様子でゲコゲコ鳴くと早足で帰っていった。
「というわけです、どうかな?」
俺が振り返るとヴェロニカはフーと煙を吐き片眉を上げた。
「いやどうするって私は知らんよ、トカゲとなんて話せないしな。他のやつに聞いてみるんだな」
そう言うと背を向けてまたタバコをふかし始めた。
次の朝、昨日の出来事をみんなに話してみた。浮かない顔でニーナが背中を掻いている。
「要するにあんたは昨晩トカゲ人間に会って、一緒に問題を解決しとうと言ったわけ。言葉が通じないのに、頼もしいわね」
まあ当然の反応だろう。他の仲間も同じような顔をしている。
「君たちこんなところにいたのかい?言ってくれれば良かったのに」
聞き覚えのある声に振り返るとそこには先日出会ったメロン農家の青年が立っていた。
「こんな場所で寝泊まりなんて危ないよ、オオカミウマがやって来るかもしれないしね。良ければ小屋を貸すよ」
俺たちは早速彼の好意に甘えることにした。暑さと寒さが交互にやってきてその上砂ぼこりが舞っていてたまったものではない。小屋は小さく古いが、野宿よりはましだ。