第215話 不気味な視線
水源を占領しているギャングに話をするもつっぱねられてしまった
「あーもう、あいつら今に見てなさいよ!」
キャンプに戻ってきて早々にニーナが悔しそうに地面を尾で叩く。だが今度はどうも武力で解決できそうにない。こちらのチーム全員でかかってもおそらく負けてしまうだろうし、先ほど出会ったメロン農家の人も頼りにならなそうだ。青果店の店員が自警団がいると言っていたが、あの様子を見ると俺たちと同じように引き返したのだろう。
「うーん困りましたね、お水がないとこの先やってはいけませんし、かといってわたくしたちそんなにお金もありませんし」
フィリアナをはじめ全員が頭を抱えている。
それはそうと俺はさきほどからだれかに見られているそんな気がするのだ。しかし振り返っても誰もいない。
「どうしたアリスガワ?」
「え、いやなんでもないよ。とりあえず昼食にしようか」
俺は昼食をとりながら考えることにした。井戸はあるみたいなのでそこから水を汲ませてもらうしかなさそうだ。だが水が足りない今、町の人たちやメロン農家がすんなりわけてくれるだろうか。
暑い日中を避けるため岩陰で休んでいるとどこに行っていたのかカルベネが帰ってきた。
「いやー暑い暑い、あっ兄さん水は手に入ったかい?」
「ないからこうしてるんだろ」
「そう言うと思って、ハイ、これを買ってきました。水より安いよ」
俺は差し出された瓶を受け取った。水より安いものとは、ジュースだろうか?少し口に含んですぐに吐き出した。
「なんだよ酒じゃねえか!しかもこれかなり強いし」
最悪だ、ただでさえのどが渇いていたのに口の中が焼けるように熱い。しかもこんなものに金を使って、怒ろうにもだるすぎて力がわいてこない。
そんなことで俺たちは日が落ちるまでなにもできずただ時間を無駄に過ごした。ようやく涼しくなってきたので町へ行き井戸があるか聞いてみることにした。
まただ、まただれかに見られている気がする。しかし周囲には俺の仲間以外の姿は見えない。これも暑さのせいだろうか。嫌な気配を振り切り、シャリンとともに再び町へ向かった。
動きやすいせいか町は人でにぎわっている。市場を離れ市街地へと向かう。人が暮らしているところのほうが井戸があると思ったからだ。
予想は当たったが残念なことに肝心の井戸の前には長蛇の列ができていた。それはそうだ、考えることは皆同じなのだ。結局俺たちは一滴も水を確保できずキャンプへと戻ることになった。